2016年09月28日(水)

JORIA:日本人デザイン専門家インタビュー

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マルハバ(こんにちは)!ヨルダン事務所インターンの國崎です。

今日は、「JORIA:刺繍・ベドウィン製品ができるまで」にも登場してもらった林芽衣専門家のインタビューをお届けします。

 

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JORIAデザイナー・林芽衣氏(写真:一番右)

東京都生まれ。小学校卒業後、自らの希望で単身スイスの中学に入学し、高校卒業までの6年間をスイスで過ごす。ニューヨークの大学でファッションデザイン学(ニットウェア)を専攻。卒業後、アメリカで3年、イタリアで4年半、一流ブランドのニットデザイナーとしてキャリアを積む。旅行で訪れたヨルダンでベドウィンの文化に魅了され移住を決意。NICCOでは、2013年にシリア難民・ヨルダン人女性向けの心理社会的ケアプログラムのボランティアを経て、2014年よりデザイン専門家として刺繍・編み物ワークショップや製作チームJORIAの指導に当たる。

 

12歳で海外へ。そしてファッションの道へ

國崎:芽衣さん、今日はよろしくお願いいたします。

林(以下敬称略):よろしくお願いします。

國崎:JORIAのお話に入る前に、芽衣さんのご経歴について少しお伺いします。なんといっても、芽衣さん自身の希望で単身スイスの中学に入学したというエピソードには驚きました。

:中学はカナダ系の学校だったんですが、初めの数か月は全然英語が分からなくて、泣きながら日本の両親に電話していました。少し分かるようになったと思ったら、次の年にはフランス語圏の学校に転校したので、また同じ苦労をしました。

國崎:ファッションの道に進もうと思ったのはどうしてですか?

林:小学生のころから、気に入らない洋服があれば家のミシンを使って自分の好みに直していました。ズボンをスカートにリメイクしたりして。そういうことが好きだったんですよね。なので、ごく自然にファッションの世界に入りたいと思うようになりました。

 

ベドウィンの人々と暮らす

國崎:アメリカやイタリアの一流ブランドでキャリアを積んでこられた芽衣さんですが、ヨルダンに来たきっかけは旅行だったそうですね。

:イタリアに戻るビザが下りるまでのつもりだったのですが、手続きにとんでもなく時間がかかったんです。その間に、ヨルダンの有名な世界遺産・ペトラ遺跡の隣にあるベドウィン(筆者注:砂漠で暮らすアラブ系の遊牧民。現在では都市部で定住する者も多い)の村で生活するようになりました。80年前から時間が止まっているような、彼らの不思議な魅力に引き込まれてしまって、そのうち外国人相手の観光の仕事をするようになりました。

國崎:世界の様々な場所で活躍してきた芽衣さんにとっても、ベドウィン文化は新鮮だったんですね。

:ヨルダンに来たらペトラは必ず行っておくべきですよ!

 

NICCOとの出会い

國崎:さて、ペトラで観光のお仕事をされていた芽衣さんが、それを辞めてNICCOのボランティアになりますよね。以前から国際協力に関心をお持ちだったんですか?

:昔から興味はあって、大学時代に南アフリカで自然生態系の調査や現地の子どもと交流するボランティアをしたこともあります。ペトラにいるときも、貧しい彼らのためになることがしたいと思っていました。女性たちと一緒に、刺繍や編み物の仕事をしようとしたこともありましたが、ベドウィンの人たちは割りのいい観光業でお金を稼いでいるので、手間のかかる仕事は続かないんですよね。彼らのような人間味のある人たちとクリエイティブな仕事がしたいと思っていたので、残念に思いました。その後、4年半過ごしたペトラからアンマンに移って、仕事が見つかるまでボランティアでもしようかな、とNGOをいろいろ探してみたら…

國崎:そこにNICCOがあったと。

:そうです。NICCOさんで刺繍・編み物のワークショップや子どもの語学教室のボランティアをするようになりました。ある時、ワークショップで作ったものをバザーで売ることになって、飾りつけの手伝いやお揃いのエプロンをデザインしたら好評で、刺繍や編み物を教える専門家にならないかとNICCOさんに誘われました。

國崎:アラビア語も堪能で女性たちと直接コミュニケーションのとれる芽衣さんは、NICCOにとってうってつけの人物だったんですね。

:私にとってもまたとないお話でした。

 

JORIA誕生

國崎:心理社会ケアの一環である刺繍・編み物ワークショップがJORIAに発展したのはどういう経緯だったのですか?

:ワークショップを指導していくうちに、参加者の中から「これを仕事にしたい」という声が聞こえてきました。初めは10人ぐらいでスタートして、少しずつバザーに参加していきました。スキルレベルは人によって違いましたし、刺繍だけでなくミシンも使える人が必要でしたから、仕事を覚えてもらうまでは大変でした。メンバーの入れ替えはありますが、いまでは約20名が活動しています。1年半前にアンマンの繁華街にあるセレクトショップと契約したこともあって、売り上げは好調です。

國崎:芽衣さんの洗練されたデザインのおかげですよね。JORIAはNICCO内でも大好評です。デザインのコンセプトは何ですか?

:アラブやベドウィンにもともとあるデザインに「ひねり」を加えています。パレスチナ刺繍を採用しているのは、最も伝統があって、クオリティの高い刺繍だからです。

國崎:「ひねり」ですか。確かにJORIAのデザインは、街の土産物屋なので見かけるものとは比べ物になりませんよね。スティッチが繊細で、色合いもとてもきれいです。JORIAメンバーの技術の高さを感じます。

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▲一口に刺繍と言っても、そのデザインは多彩

 

未来へ向かって

國崎:女性たちを指導するうえで、心がけていることはありますか?

:長い付き合いになってくると、つい忘れそうになってしまうのですが、彼女たちはそれぞれ難しい背景をもっていて、他人の言動に敏感なところがあります。なので、問題があっても強く当たったりしないで、ポジティブに接するよう心がけています。

國崎:私がこちらに来たばかりのころ、JORIAの女性たちの優しさのおかげで緊張や不安がだいぶ和らぎました。一緒に仕事をしていると喜びも多いのではないですか?

:「JORIAが大好きだよ」、「この仕事をしていると元気が出てくるよ」と言われるととてもうれしいです。彼女たちの良い変化を見られることにやりがいを感じています。世の中には、豊かな暮らしをしていても意欲に欠けた人がたくさんいる中で、JORIAの女性たちは持つものは少なくてもやる気に溢れています。

國崎:かつてベドウィン女性たちと成し遂げられなかったことが実現しているわけですね。JORIAの女性たちには末永く活躍してほしいです。JORIAの未来について何かお考えになっていることがあれば教えてください。

:たとえNICCOの支援がなくなった後でも、何らかの形で存続してほしいと思っています。彼女たちにとってJORIAは人生の一部になり始めています。女性どうしが助け合って運営するグループになったらいいですね。

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▲デザイン図や実際の見本を使っての丁寧な指導

 

國崎:最後に、このブログを読んでいる日本の皆さんにメッセージをお願いします。

:人のためになると思ったことは、考えるより前にすぐに実行してみてください。常識にとらわれないで、自分が良いと思ったことはどんどんチャレンジしていきましょう!

國崎:10代の初めから自分の意志で世界に飛び出していった芽衣さんらしいお言葉ですね。今日はどうもありがとうございました!

:ありがとうございました。