みなさま、こんにちは。ケニア事務所の出口です。
8月上旬に日本へ一時帰国していました。日本の夏は湿度が高いので、体が重く感じます。
事業地のキスムでは、年間を通して、1日の平均気温が25度程度で一定しており、湿度は低くからっとしています。一般的なアフリカのイメージである「灼熱の地」とは違い、比較的過ごしやすい気候です。
日陰でおしゃべりをしていた子どもたち。日差しは強いが、過ごしやすい気候。
さて、前回はケニアの母子保健事業の概要を説明させていただきました。
今日は、7月末に開始した道の修繕活動についてお話しさせていただこうと思います。
NICCOの事業地であるキスムは、ケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれたアフリカ最大の湖であるビクトリア湖に面したケニアの町で、地下水位が高く水はけの悪い地域です。
市街地や幹線道路は舗装されているものの、事業地に1歩足を踏み入れると、未舗装の道が広がります。そういった地域では、雨が降ると、歩行が困難になるほど道がぬかるんでしまう場所がたくさんあります。私たちの活動地の大部分でも、雨期になると写真の様に車でさえ通行できないような状態になってしまいます。
(左)足の踏み場もないほどぬかるんだ道 (右)車が立ち往生してしまった悪路
地域の妊婦さんや、小さな子どもを抱えるお母さんからは、「雨が降ると本当に大変。歩くのも危ないし、バイクタクシーはもっと危ない。」といった声が聞かれます。ケニアでは、中型バイクの後ろに乗って移動するバイクタクシーが1つの主な移動手段ですが、ぬかるんだ場所ではスリップしやすく、転倒事故がよく起きます。また、村落部では外灯があまり設置されていません。夜間に病院施設へ行くためには、暗い中ぬかるんだ滑りやすい道を歩かなければならず、通院には更なる危険が伴います。
こうした問題を解決するため、NICCOは母子保健事業の一環として、病院施設周辺で、日本の土のう技術を使った道の修繕活動を、別のNGO(道普請人:CORE)と協力して行っています。
※道普請人とは・・・・ 京都に本部を置き、世界各地で道路改修を行っている認定NPO法人。土のうによる道路整の技術を移転し、現地で調達可能な資機材を用いることで、持続的に維持管理していける仕組みを作り上げている。 |
ここで実際に道の修繕作業に取り組むのは、地域の役場で若者グループとして登録されている35歳以下の住民たちです。彼らは、地域の清掃など、役場からの仕事を収入源の1つとしています。しかし仕事は不定期で、普段は日雇いの仕事を探したり、畑作業をして生計を立てており、収入が安定しているとは言えません。
NICCOの道修繕活動は道を直すことだけが目的ではありません。この活動を通して、地域の若者たちに道修繕の技術を伝え、彼らの新たな収入源としてもらうことも目的に行っています。
それでは、道の修繕について、今年行っているものを参考に、もう少し詳しくご紹介します。
活動初日は、現場監督による道の修繕方法の説明や、長靴やシャベルなどの必要資材の配布が行われました。
(左)土のうを使った道の修繕方法に興味津々の若者たち (右)長靴などの必要資材の配布
2日目以降、修繕箇所まわりの除草から始めました。鍬やシャベル使いは手慣れており、みんなテキパキと仕事をしていきます。
その後、土を撒いて地盤を平らにします。ここで、コンパクターという器具を使います。地面を上からたたき、土同士の隙間をできるだけ小さくすることで、高密度で固い地盤ができます。
この作業が終わると、この道修繕事業のカギともいえる、土のうを敷いていきます。土のうを使った道の修繕は、コンクリートを使った道の舗装よりも費用を低く抑えることができ、なおかつ、今後地域に住む住民が必要時に再度自分たちで修繕していくことが可能なものです。
土砂を布製の袋に入れて土のうを作り、ならした地面に敷き、同様にコンパクターでたたきます。
(左)土埃の舞う除草作業 (右)コンパクターで土のうを締固める作業
地ならしと土のうの敷設の2つを行うことで、地面が均一に10センチほど高くなり、また、固くて丈夫な道ができあがります。道の脇は雨水が流れるように地表は低いままになっており、下水道などの整備がほとんど進んでいない村落では最善の修繕方法だと考えられます。
更に土のうの上から土をかぶせ、最後にもう一度コンパクターでたたいて、完成です。
※場所により、土のうを2段にしたり、3段にしたりします。
今回は、地域の若者25人(男性16人、女性9人)と20日間の作業を行い、340mの道を修繕しました。
(左)修繕前 (右)修繕後
地域の住民が季節や天候に関わらず、以前よりも安全に病院施設へ通院できるようになりました。
道の修繕技術を学んだ若者たちが、今後も地域のために道の修繕を続けていくことができれば、病院施設へのさらなるアクセスの改善にも繋がっていきます。そのために、この若者グループと地域行政の関わりを作ったり、グループの組織運営について助言をするなど、私たちもできる限りこの若者グループをサポートをしていければと思っています。
NICCOは、引き続き母子保健知識の啓発や産婦人科施設の充実に取り組みながら、関連する様々な問題にも取り組んでいきます。
今後もNICCOへのご支援をよろしくお願いいたします。