滋賀県東近江市 生物多様性保全

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プロジェクトの背景

近畿の水がめとして重要な役割を担う琵琶湖では、1950年代以降赤潮の発生等深刻な環境汚染に悩まされてきました。なかでも、水質汚濁の一因として挙げられるのが、代掻きによる農業排水です。NICCOでは2008年度から滋賀県・竜王町にて、2014年度から東近江市にて、「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水不耕起稲作)の推進活動を進めてきました。いずれの地域も、多くの生き物が生息地する気候と地理的条件を持つ豊かな自然に恵まれ、江州米の産地としても知られています。

しかし、日本では全国的に、戦後の食生活の多様化による米離れが米の余剰と販売価格の低下をもたらし、その対策として米の生産量をコントロールすることで販売価格を調整する減反政策が導入されました。減反政策では、圃場をいくつかのブロック(区画)に分けて3年に1度米の生産が基本的に禁止されるブロックローテーションが行われ、大豆や麦などの転作を行う圃場や休耕田となる圃場が増えました。さらに、若者の農業離れは農村の過疎・高齢化を引き起こし、耕作放棄地や兼業農家の増加をもたらしました。兼業農家は農業に従事できる時間が短く、効率的な農作業を必要とするため、農薬や化学肥料の使用、機械化が進み、その結果、農業排水による琵琶湖水系の富栄養化や生態系のバランスの乱れといった問題を引き起こしています。

プロジェクトについて

NICCOふゆみずたんぼプロジェクトでは、琵琶湖の水質保全・生物多様性保全の促進、農家の収入向上、都市と農村の人々の交流促進、地域活性を目的として「ふゆみずたんぼ」の実施と普及活動を行っています。「ふゆみずたんぼ」は、不耕起栽培、つまり土壌を耕さずに稲の古株や藁を翌年までそのまま残すため、藁が水中でゆっくり分解され藻類や微生物の棲家となり、それらを食べる虫や爬虫類、さらにはそれらを捕食する鳥類が水田に集まります。また、代掻きをしないため、琵琶湖水系の農業排水の汚染を抑制し、農薬や化学肥料を一切使用しないため、環境にやさしく、周囲の田んぼの環境保全、生物多様性保全に貢献します。

また、そこから栽培されるお米は安心・安全なお米として付加価値の高い農産物として農家の収入向上につなげることができます。滋賀県竜王町の「ふゆみずたんぼ」プロジェクト(2008-2013年)では、田んぼの生きもの観察会を通して、カスミサンショウウオ(環境省レッドリスト絶滅危惧II種、滋賀県レッドリスト希少種)やコオイムシ(環境省レッドリスト準絶滅危惧種)、ニホンアカガエル(滋賀県レッドリスト要注目種)を含む絶滅危惧種・要注目種・希少種等12種の復活を確認しました。また、「ふゆみずたんぼ」と慣行農法の圃場両方で水質検査を行った結果、「ふゆみずたんぼ」に張られた水は、リン含有量が0.1mg/L未満、窒素含有量が0.5mg/Lであったのに対し、慣行農法の圃場の代掻き後の排水は、リン含有量が13.7mg/L、窒素含有量は15.2mg/Lでした。この結果からも「ふゆみずたんぼ」が富栄養化された琵琶湖の水質保全に大きく貢献していることがわかります。

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