プロジェクトの背景
ヨルダンでは19歳以下の若者が総人口の約44%を占めており、ヨルダン社会の発展に貢献する大きな可能性を秘めています。しかし、近年は高い失業率や物価の上昇、シリアやイラクなど不安定な国に囲まれていることなど、青少年を取り巻く社会経済環境が不安定な状況にあることから、青少年や家族、地域社会の人々の心に他者や社会に対する不満や不安がもたらされています。そうした青少年たちの鬱積した思いは非行や犯罪件数の増加という形でも表れており、少年たち自身だけではなくヨルダン社会にとって大きな課題となっています。
NICCOは、ヨルダン国ザルカ県ルサイファ市にて、犯罪を犯した16歳から18歳の少年を収容する勾留施設において心のケアや職業訓練を行い、こうした活動を通じて少年たちが心身ともに社会復帰に向けた準備ができるような支援を実施しています。一度罪を犯してしまったとしても、少年たちが再び罪を犯すことなく社会の中で自立できるように、そして、二度と被害者も加害者も生み出すことのない社会を作るために私たちは活動しています。
プロジェクトについて
1.勾留施設内での職業訓練活動
▲菜園活動の開始前(左)と活動中の様子(右:2021年2月)
勾留施設内で少年たちが菜園や理容、革加工などの技術を習得し、勾留施設を退所した後の就職につながるような職業訓練の活動を行っています。また、実際に手や体を動かして土や道具に触れながらグループで行うこれらの活動は、施設を退所した後の少年たちの日常生活において求められる人間関係の構築や精神状態の安定などへの効果が期待でき、心のケアの面からも少年たちの社会復帰を支援しています。
2.少年たちへの心のケア
▲グループで心のケア活動を行う様子。
ヨルダン人心理士が施設内の少年たちに対してカウンセリングを行い、彼らが抱える悩みや問題に寄り添い、少年たちの社会復帰への架け橋となるように支援しています。カウンセリングを通じて少年たち自身が自分の置かれた環境や自分自身の特性を理解することが、非行や犯罪を犯した背景や原因を考えるきっかけとなり、もう二度と罪を犯さないための方法を少年自身と一緒に考えていく一歩となります。
また、少年たちの社会復帰には家族や保護者、地域の人々の協力や理解が大切です。勾留施設を出た後に少年たちが安心して過ごすことができる場所がなければ、容易く非行や犯罪を再び犯してしまうでしょう。社会復帰を目指す少年たちとのかかわり方や支援の仕方を啓発することで、地域社会における少年たちに対する偏見を緩和することを目指しています。