シリア難民問題の今
2011年3月に発生したシリア危機。5年以上が経過した今、内戦は長期化し、周辺国やヨーロッパなどに逃れた難民の数は470万人を超えました。陸続きのヨルダンやレバノン、トルコに逃れる人、ヨーロッパ諸国に逃れる人、金銭的な理由などで国を出ることができずシリア国内で避難生活を送る人…。全ての被災者は長引く避難生活で、金銭的にも精神的にも疲弊しています。出口の見えないシリア難民問題に対して、日本に住む私たちにできることは何かあるのでしょうか?
▲越冬物資を受け取るシリア難民(2015年ヨルダンにて)。発生から5年以上が経った今、国際社会からの支援は減りつつあります。
安心して暮らせるその日まで
そもそも、難民問題の解決とは何を指すのでしょうか。最も理想的な解決は、シリア難民と国内避難民が、住んでいた土地に帰り、安心して暮らせる生活を取り戻すことです。しかし、国民の約66%が難民、避難民となった現状を見ると、理想の実現は遠く感じられます。
このような状況の中、私たちがすべきことは、彼らが安心して帰国できるその日まで、彼らを支えることだと考えています。
将来に向けた前向きな取り組みを
NICCOは支える方法の一つとして、コミュニティ スペースの提供という手段を選びました。ヨルダンに住むシリア難民の約8割は、難民キャンプではなくアパートを借りるなどして地域社会の中に住んでいます。
▲シリア難民が住むアパート。家賃を支払うために、貯金を切り崩したり、肉体労働の仕事をしたりしています。
異国に逃れた彼らを襲うのは、絶望感や孤独感、そこから来るストレス、先の見えない将来への不安、貧困が原因となる児童労働や早期婚、家庭内暴力、いじめなど、多くの問題です。
そこで、NICCOはヨルダン西部ザルカ市周辺に2か所、コミュニティスペースを設け、心のケア、刺繍や石鹸作り、日曜大工などのワークショップ、英語教室や、健康・法律相談など避難生活に役立つ情報を提供するセミナーを開催しています。
▲子ども向け心のケアワークショップで笑顔を見せる女の子。厳しい避難生活の中で、紛争や避難生活の苦しみを分かち合える場所、子どもが子どもらしく振る舞える居場所作りも必要とされています。
▲女性たちに向けた編物ワークショップを開催しています。
ここは、シリア難民が安心してつどえる居場所であると同時に、教育や能力向上のワークショップという将来に向けた前向きな取り組みに参加できる場所でもあります。
先の見えない避難生活の中で、希望を見出せる居場所があるということ。
今、彼らの将来を見据えた支援が必要とされています。
インタビュー
あなたが支援してくださっているのは、顔の見えない誰かではなく、苦しみながらも希望を捨てずに生きるシリア難民の一人ひとり。インタビューを通じて彼らの想いをお届けします。
◆アミーラさん(15歳、心のケアワークショップ参加者)
「私の夢の1つは、外科医になって多くの人を救うこと。」
私には夢が3つあります。1つは、外科医になって多くの人を救うこと。2つ目は、全ての人にとっての平和が訪れること。3つ目は、家族が幸せでいることです。ヨルダンに来てすぐの頃は、ヨルダン人からは差別を受け、隣人からは大金を盗まれました。自分に自信を持てず、積極的に人と交わることもありませんでした。
でも、NICCOの心のケアワークショップに参加して、悲しみはすぐに過ぎ去り喜びや幸せは長く続くものであること、勇気を持って行動することを学びました。今は、自ら父に頼み込んでよりよい教育を受けられるようヨルダン人が通う学校に転校し、大学の奨学金を取れるよう一生懸命勉強しています。(インタビューの詳細はこちらのブログから)
◆ハミードさん(41歳、大工ワークショップ参加者)
「本当はシリアに帰りたい。どんな辛い事が起きても母国だから。」
私は、シリアの首都ダマスカス郊外の小さな村に住んでいましたが、爆撃を受けて息子と一緒にひどい怪我を負いました。トラックの荷台に3日間も揺られてヨルダンに運ばれ、20回以上手術を受けました。息子の怪我は治りましたが、彼はいまだに心に深い傷を負っています。私の怪我をした手足は不自由なままです。元気な頃は大工をしていたので、早く働いて家族を楽にしてやりたいです。
今はこのままヨルダンに残るべきか、子どもの未来の為に違う国に行くべきか悩んでいます。でも、本当はシリアに帰りたいです。どんな辛い事が起きても私たちの母国ですから。きっといつか、帰る日が来ると信じています。(インタビューの詳細はこちらのブログから)(インタビューの詳細はこちらのブログから)
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