2022年01月14日(金)

女性の所得創出活動について(ほうき作りと販売)

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ブログをご覧の皆様、こんにちは!

NICCOインド事務所の駐在員、萩原です。

日頃よりNICCOの活動をご支援頂き、誠にありがとうございます。

早くも2022年も半月が過ぎようとしています。

皆さん今年はどのような1年になりますでしょうか??

 

さて、前回のインド事業紹介ブログでは、インドのコロナ禍における生活困窮者への支援事業を紹介させて頂きました。

今回は女性のエンパワーメント事業の一環で行った「ほうき作り」の活動の様子を紹介いたします!

過去のインド事業ブログをご覧になっている方はご存知かと思いますが、インド事業では、事業の中心に据えている有機農業事業の他に、女性の社会進出、地位・所得の向上を図った女性のエンパワーメント事業も行っています。

前々回のブログ「インドでの女性の識字教室事業の紹介では識字教室の活動の様子をお伝えしました。

上記の識字教室へ参加した生徒さんを中心に、今回はほうき作りと販売を行いました。

ではなぜ「ほうき」なのか?

 

インドには「Diwali(ディワリ)」という伝統的なお祭りがあります。

これはインドのヒンドゥー暦上の新年を祝うお祭りで、年によって異なりますが、10月~11月にかけて行われます。なんと世界中で10億人を超える人がディワリを祝うと言われています。

色々な宗教やコミュニティが共存しているインド社会ですが、ディワリはその垣根を越えて盛大に祝われる新年のお祭り。地域や宗教によってディワリの由来や神話には解釈の違いがあるものの、それもインドらしくて面白いところ。とにかく、多くの人にとっておめでたい重要な祝日なのです。

ディワリには、数多くの儀式や習わしなどがありますが、その中の一つに「新しいほうきを購入し、購入したほうきで家を掃除する」という習わしがあります。

日本でいうところの「年末の大掃除」といったイメージです。

そのためディワリ前になると、街の市場は清掃道具を買いにくる人々で賑わいます。

私達は普段の事業で協働している農村女性達と、このお祭りに合わせて何か出来ないかと話し合いました。

多くのアイデアや要望が出ましたが、数あるアイデアの中から、予算や取り組みやすさなどを検討し、実現可能なアイデアを絞り込み、ほうき作りを実施することに決めました。

一緒に活動を行うメンバーの中には、普段から自宅用にほうきを作っている女性もいます。

しかし、実際にプロのほうき作りの講師に習う機会はありません。

まずは、町のほうき屋さんに直接赴き、つくり方を学びます。

▲ほうき作りを学ぶ女性達

この際、単にほうきの作り方を学ぶだけでなく、どのような材料が必要なのか、町のほうき屋さんはどのくらいの値段で販売しているのか、どのような業者から原材料を仕入れているのか

といったことも併せて学ぶ中で、社会との関りを感じる事に加え、簡単なマーケティングや原料調達の方法なども学びます。

当会職員と共に材料を購入したら、いよいよほうき作りです。

▲材料を適切な長さに分別していきます

材料は事業地周辺で容易に手に入るココナッツの葉を使用します。

仕入れしたココナッツの葉は長短バラバラのサイズなので、まずは長さを揃えます。

▲ほうきの重さを量る女性達と当会現地職員

長さが揃ったら、秤で重さを量ってきます。

村の人々はモノを手作りする際には、感覚や目分量で行う事がほとんどです。

しかし実際にお客さんに販売するとなると、同じ質のものを作る必要があるため、感覚に頼って作るわけにはいきません。

また、貴重な材料を無駄にしないためにも、一つ一つ重さを確認するのは重要な作業であります。

こういったことを現地のインド人職員とともに説明します。

▲重さと長さを揃えたほうきを並べる女性

▲ほうき作りの動画を見て、作り方やコツを再度確認する女性

また、一度きりのほうき作り研修では女性達も自分たちでは完璧に作成する事は出来ません。

そのため、ほうき屋さんへ研修に行った際には、現地職員が動画を撮影しておき、女性達が何度でも復習出来るようにしておきました。

現地職員たちも何度も動画を見る事で、自身たちもコツやポイントを学び、次回以降の指導に活かせるようになるのです。

並べたココナッツの葉を針金でしっかりと固定したら完成です。

完成したほうきは街の市場でお祭り前の期間に販売します。

▲女性達が作成したほうきを販売する当会現地職員

長さごとに分けたほうきを特大、大、中、小、の4種類で販売します。

▲ほうきを手に取って見る地元のお客さん

盛況です!

女性達は1~2時間のほうき作り作業から80Rs~100Rs(日本円にして約120円~150円程)の収入を得ました。この収入は、インドの物価からしても、僅かな金額です。

例えば、建設現場の作業員や町の清掃員などの仕事だと、1日8時間の労働で300Rs~500Rs程の収入になります。

普段主婦として1日家事をして過ごす女性達にとっては、少ない金額であったとしても貴重な現金収入となります。

実際に、「働く事、収入を自ら得る事に対してより意欲的になった」といった声が女性達から聞こえています。

身近に手に入る材料を活用し、村の女性達にとって取り組みやすい活動を選定する事で、私達の支援がなくても、彼女達自身で活動を続けることができます。

一方で上述した活動のすべてが計画通りにはいきません。

今回の活動では、ほうきを作った女性達自身がお店に立ち、販売まで行うところまでを目指しましたが、販売したいと手を挙げる人がいませんでした。

理由としては、人通りの多いお祭りシーズンで、女性が店頭に立ち、販売を行う事は恥ずかしいと感じる人が多いためです。

自ら作ったものがお客さんに購入されるという経験を通じて、女性の活動参加への意欲を高めると考えますが、

まずは現地の文化に倣い、少しずつ女性達が社会に関わる機会が増えていく事も大切な事だと考えます。

 

さて、今回は女性の所得向上事業のほうき作りを紹介しました。いかがでしたでしょうか?:)

女性のエンパワーメント事業では、他の所得創出活動を行っていますので、次回以降のブログで紹介できればと思います。

最後までご覧頂きありがとうございました!