こんにちは。インターンの塚田です。今回は、現地にて働く日本人専門家(看護師)の方からお話を伺いました。
経歴:横浜市出身。看護師。病院勤務を経て、青年海外協力隊員としてパキスタンに派遣される。帰国後もパキスタンのカシミール地方での地震や、2010年のパキスタン洪水の際にNICCOと共に被災地支援に専門家として関わる。東日本大震災発生後は東北事務所にて2年間心理社会的ケア事業に携わり、その後2013年にヨルダンに派遣される。
今回は主に、現地の人との交わり方、「日本人として」働くことなどを中心に聞きました。
元協力隊員の先生に影響されて。
塚田:国際協力に興味をもったきっかけを教えてください。
森尾:いちばん最初に思ったのは高校生の時かなあ。先生の中に元青年海外協力隊の方がいて、感化されちゃったんだよね。話を聞いているうちに、「海外で働いてみたい」と思うようになって。
塚田:身近にそういう方がいるのは大きいですね。
森尾:そうね。その後紆余曲折あって、看護師になったんだよね。5,6年たって、そのころには、国際協力とか、忘れかけてたんだけど。ある日電車で協力隊の中吊り広告を見て、そういえば海外で働いてみたかったなって。それで確認してみたら、自分もいけるんじゃない?と。
実際に行ってみて~本当に支援が必要なのか?~
塚田:実際に行ってみて、パキスタンはどうでした?
森尾:行ってみたら、想像以上に発展してて、本当に支援なんかいるの?って感じだった。特に地方じゃなくて都市の病院への派遣だったから、現地の人もみんなプライドあるしね。「日本人が一体何を教えに来たんだ」って態度で。自分も30代で仕事できるようになってきたころで、「教えてやろう」ってそんな天狗じゃないけど、そんな気持ちで行ってたと思うんだよね、それで行ったから、カルチャーショックというか、くじかれたね。
塚田:確かに、何を支援したらいいのかわからなくなりますね。
森尾:それに加えて、パキスタンて、医学教育は全部英語でやってて、対して日本だと全部日本語でするでしょ?それはそれですごいことなんだけど、こっちは消毒薬の名前一つとっても英語で分からない。「そんなことも知らないのか」って思われたりして、そういう悔しさがあったね。聞いてみると、技術系の隊員はみんな同じ壁にぶつかってたなあ。
塚田:それから一度日本に戻り、その後カシミールでの地震を機会に戻ってきたと。
森尾:そうだね。そこからNICCOと一緒に働くことになった。東北、ヨルダンときたけれど、自分が関われるのはうれしいね。うれしいといったらあれだけれど、関わりたいといって関われるもんではないから。特に東北は、ボランティアで来る人はたくさんいたけど、長い期間腰を据えて、住むことなんてなかなかできないしね。ちょうど避難所から仮設住宅に移ったり、被災した人たちが少しずつ前に向かう過程っていう貴重な現場に立ち会うことが出来たよ。
人対人~現地に寄り添うということ~
塚田:そこからヨルダンへ来られて、いかがでしたか。
森尾:最初の1,2年は悩んだね。言葉も、スタッフとの意思疎通もうまくいかなくて、これでいいのかなって。現地スタッフともよくぶつかってたし。パキスタンの時と同じように。「現地のことはこっちの方が良く知ってるよ」ってね。
塚田:今ではアラビア語を使って、現地の方と一番身近にコミュニケーションを取られている森尾さんからは考えられないですね。
森尾:やっぱり長い時間かけて、折り合いのつけ方がわかってきたかな。日本のやり方と、現地の考え方のね。言語も分かってきたし。もともとウルドゥー語(パキスタンの言語)と近いしね。
塚田:きっちり言語もマスターして、現地の方に身近な日本人スタッフとなるというのが森尾さんのスタイルなのかなと。
森尾:そうね。やっぱり看護師なのも影響してると思うよ。人対人の、患者さんを相手にする仕事をしてきたから。相手を決して無下にはできないし。ただ言語が分かると辛いこともあるよ。よくあるのが、シリア難民の方がいらして、「ずっと前に登録したのに(物資配布の)連絡がない」って直接言われて、謝るしかないよね。それでも、日本人が謝ることにも意味があるのかなって思ってて。やっぱり印象が違うんじゃないかな。
アラブ人~見習うべきは人と人の近さ~
塚田:パキスタン、東北ときて、ヨルダンですが、どんな違いがありますか?
森尾:パキスタン人よりは心に余裕があるかな。経済的に困っている人、絶対的な貧困が少ないのは確かだからね。勿論ヨルダン人も生活に困ってはいるけれど。
塚田:確かに比較的発展はしてますからね。
森尾:あとは、日本との違いでいうと、これはパキスタンも同じだけれど、イスラム教ありきのところかな。精神的な拠り所の大きさ。水や空気のように、当たり前に神様がいるよね。いいことも悪いことも、「インシャ―アッラー(もしアッラーが望むならば)」と言って、神様が決めたことだからと受け入れてしまう。日本人は「神様がいるかいないか」から考えるから、出発点が違うんだよね。東北の震災で家族を失った人に「インシャ―アッラー」なんて絶対言えなかったろうし。こっちの人達は、日本人とは違った運命の受け入れ方というか、そういう意味で強いよね。あと、家族を尊重する心とか、人の近さは本当にすごいと思うなあ。
塚田:「他人」っていう概念がないですよね。
森尾:ほんとにね。そんな単語あるのかなあ。絶対に家族とか友人をほうっておかない社会だよね。どれだけ苦しくても、助け合う。独居老人とかありえないもんね。
塚田:個人主義とか、そういうものとは相いれないですし、コネが強いなど問題もありますが、また違った社会のあり方がありますね。
森尾:ほんとに。社会的な大人さというか、それは日本より上なんじゃないかなあ。見習うべき部分がたくさんあるんだよね。
インタビューは後半に続きます!