プロジェクトの背景
2011年以降、軍事政権からの民政移管が進み、政治、経済面で大きな変革期を迎えているミャンマー(ビルマ)。
この国では、130もの少数民族が居住しており、国境の山岳地帯では、1948年のミャンマーの独立以来、中央政府と各少数民族組織の間で軍事的対立が続いています。戦闘に巻き込まれた住民達は、難民、国内避難民になるなど、多くの困難を経験して来ました。
ミャンマーは2011年以降、政治、社会、経済の各分野において変革がすすんでいます。各少数民族と連邦政府の間での軍事的対立も、停戦と和平交渉が進み、長年の課題である少数民族の人道問題に解決の可能性が出てきています。今後は難民や国内避難民の方々の大規模な帰還が予想されます。
このような変化を受け、NICCOはジャパン・プラットフォーム(JPF)の一員として、これまで調査団に3回参加し、タイとの国境地帯にあるカレン州での調査を続けてきました。
その結果、カレン州の国境に近い遠隔地では、長きにわたる紛争のために、広い地域でインフラ整備が不十分であり、政治的理由で公共サービスが届きにくい地域が存在することがわかりました。
なかでも、帰還する難民や国内避難民の受け入れが想定される、カレン州の村落では、コミュニティの基盤として、低水準にある保健医療分野の改善を図ることが求められています。
プロジェクトについて
こうした状況を受け、NICCOはミャンマーにて、プライマリ・ヘルスケア(PHC)を中心とした保健医療支援を開始しました。
現地の医療機関と連携し、住民の中から選ばれた保健ボランティアに対して、衛生、母子保健、感染症対策に関する研修を行い、知識や能力の向上を支援しました。
さらに、研修を受けたボランティアが、住民に対して健康教育や健康相談などのサービスを提供することで、コミュニティ全体の、健康に関する意識や知識を向上に努めています。
また、コミュニティの衛生環境改善をはかるため、エコロジカルサニテーショントイレ(以下:エコサントイレ)の建設技術の移転と継続的な利用普及をはかってきました。
こうした保健ボランティアによる村人への保健・衛生サポートやエコサントイレの維持・増設に関わる将来的な必要資金をコミュニティの中で生み出すことを目的として、村人たちとの話し合いにもとづいて「ブタ銀行」を設立し、住民らによる運営のサポートを続けてきました。
2016年6月以降は、モニタリングやエコサントイレの建設を行っています。
*「ブタ銀行」とは
住民らの投票で選出・組織化された「ブタ銀行委員会」に対し、NICCOが子ブタと初期の餌の購入代金を支援、委員会は購入した子ブタと餌を、飼育を希望する世帯に貸し出します。飼育希望者は、受け取った子ブタを育て、半年後に食肉用として販売します。その収入で、最初の購入代金に利子を加えて委員会へ返済するという仕組みが「ブタ銀行」です。委員会は返済されたお金で、次の飼育希望者へ子ブタと餌を貸し出します。この過程を繰り返し、次第に利子が貯えられ、村内の保健・衛生活動に充てられます。