2022年01月13日(木)

インドでのコロナ禍における生活困窮者への支援事業の様子

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ブログをご覧の皆様、こんにちは!

NICCOインド事務所の駐在員、萩原です。

日頃よりNICCOの活動をご支援頂き、誠にありがとうございます。

 

さて、前回のインド事業紹介ブログでは、女性の識字教室の活動を紹介させて頂きました。

今回はインドのコロナ禍における生活困窮者への支援事業を紹介いたします!

新型コロナウイルスによる感染拡大で、インドでは2021年の4月から5月にかけて、多数の新規感染者そして死者が連日相次いだことが、世界各国そして日本でも大きく報道されました。インドでのこの「第2波」当時、1日の新規感染者数が40万人超ペース、1日あたりの死者も4000人を超える事態となり、大都市をはじめとする多くの都市でロックダウン措置が発令されました。

当会が事業を行っているビハール州・ブッダガヤ市においても例外ではなく、多くの人が感染し、ロックダウン措置が出された事により多くの人が生活に支障をきたすことになりました。

国内外より多くの観光客が訪れる仏教の聖地、ブッダガヤではコロナウイルスの感染拡大の影響を受け、観光客がゼロに等しいほどに激減し、多くの人が生活困窮状態へと陥りました。

当会インド事業ではこの状況に対して、生活困窮者への支援事業として2021年の9月より約2700世帯の家庭に対して、2か月に渡り食糧の配布を実施しました。

 

国際支援において、中長期的な目線で人々の生活の質を向上していく「開発」と、自然災害や紛争などで生活困窮に陥った人々を支援する「緊急支援」の2つ分野があります。

今回の当会のインド事業が行った支援は、コロナ禍で生活困窮に陥った人々への緊急支援の事業に該当します。

食料や物資などの支援は一時的な支援であり、未来永劫に渡って行えるものではありません。つまり持続的な支援ではありません。また、物資や食料を配布する事で裨益者が外部からの支援に依存して、自立する事を妨げるのではないか という考えもありますが、それでもやはり人道支援は必要不可欠な支援だと考えております。

戦争や自然災害、また今回のような世界的な感染症により生活困窮に陥る人々は「今日を生きる」生活をしています。自立や成長という概念の前にある、最も重要な事であり、今その瞬間を生きるために必要な食糧や物資を求めている人々に対して行う支援は、いくら一時的なものであっても行うべきであると考えます。

今回の記事では、支援を受ける人々を対象とした事前調査から、実際に人々の手元に支援物資が届くまでの流れを写真と共にお伝えしたいと思います。

まずは、どの地域のどのような人々が、どの程度、生活困窮に陥っているのかを調査します。

▲写真①事前調査の様子

こちらの調査では、新型コロナウイルスのパンデミックに影響を受け、失業もしくは収入が減少した世帯、家庭内に障害を持つ世帯など、複数の選定条件に基づいて調査を行います。

特に生活困窮している住宅エリアを中心に、延べ4000~5000世帯ほどを調査します。

当会で設定した基準を満たす世帯を支援対象とし選定した後に、食糧引換券を配布します。

▲写真②支援物資の引換券を受け取る裨益者

▲写真③裨益者の自宅 (※住人の方の許可を得て撮影しております)

支援を受ける人々の多くは、新型コロナウイルスの影響を受ける以前より貧しい生活環境にありますが、今回の失業や収入減により、これまで以上に生活困窮に陥っている状態です。

▲写真④支援物資を受け取るために列に並ぶ人々

▲写真⑤物資を受けとる裨益者

▲写真⑥配布した食糧

今回配布した食糧は

・食用油1ℓ

・米5キロ

・ダル豆1キロ

・塩1キロ

・ジャガイモ1キロ

・玉ねぎ1キロ

・チリパウダー 200g一袋

・ターメリックパウダー 200g一袋

・コリアンダーパウダー 200g一袋

上記のアイテムを1世帯分とし、週に1回、合計8回配布しました。

配布の際には、途上国においては日本人の常識では想像もつなかいようなこと発生します。

中には、配布したクーポンをまるで本物のように複製し、複数回支援を受けようとする人や、支援対象になっていない人が複製したクーポンを利用して物資を受け取りに来ることも頻繁にあります。

そのような中で、一人一人身分証明と顔の認識を行い、物資を受け取った回数を細かく記録する必要があります。

▲写真⑦受け取りの指紋押印を行う裨益者

裨益者の中には、文字を読み書きする事の出来ない方も多く存在します。そのような方々には指紋での押印を依頼し、受け取りの記録を残していきます。

配布を行った後には、食糧がどの頻度でどの程度消費されているのかをモニタリングする必要があります。

配布を行った世帯を地元の行政担当者とともに訪問し、支援前後の生活の変化や、意見の交換などを行います。

▲写真⑧支援物資配布後のモニタリングを行っている様子

モニタリングを行う中で、裨益者が生活の中で真に必要としている食糧や調味料などの要望を受ける事があります。そのような声が複数あがり、準備された予算の中で変更対応する事が可能である場合には、支援物資の内容を変更する事も起こりえます。

実際に、今回の事業を行う中で、ターメリックパウダーの量を減らし、コリアンダーパウダーを物資の中に取り入れてほしいという要望が複数あがり、要望に対して支援内容を変更する事例がおきました。

このように、緊急の支援の中においても、常に裨益者との意見交換を行い、実際に必要とされている支援を届ける柔軟性と対応力がNGOには求められます。

 

今回の支援を行う中で、地元の人々や行政からも感謝の声を多数頂きました。

そのような瞬間は、現場で支援を行う喜びを感じる瞬間です。

▲写真⑨今回の事業で活動をともにした職員一同

また、私達インド事務所は通常7人のインド職員と一緒に働いていますが、

今回のような緊急支援の事業においては、新たに短期の職員を雇用する必要があります。

データを扱うスタッフから、食糧をパッキングする作業スタッフまで、限られた時間の中で多様な職員を雇用し、信頼関係を構築して仕事を進める事も求められます。

 

以上、簡単ではありますが、コロナ禍における緊急食糧支援の様子をお伝えしました!

少しでも現地での様子が伝われば嬉しい限りです!

ではまた次回のブログでお会いしましょう!