こんにちは。ヨルダン事務所インターンの森本帆乃香です。今回は、2022年4月からヨルダンで開始した環境啓発プロジェクトとプロジェクトパートナーである環境保全活動家のエルハムさんついて紹介します。
・環境啓発プロジェクトについて
NICCOはバルカ県アルダ地区ベイユーダ村にて、新しく環境啓発事業を始めました。ベイユーダ村はヨルダン北部に位置し、首都アンマンから車で40分程の所にあります。
当プロジェクトは、パーマカルチャーの実践を通して持続可能なコミュニティづくりに取り組んでいるベイユーダ村のNPO団体(Balqa creativity Foundation)と、ヨルダンで在来種の森づくりに取り組んでいる日系団体(一般社団法人ミドリゼーションプロジェクト)とともに、多くの家族が小規模農家であるベイユーダ村の全住民(人口約4,000人、600世帯)を主な対象として実施します。
このプロジェクトが始まった背景は、ベイユーダ村における自然環境の悪化、在来植物の減少、また住民がその問題について認識していないこと、認識していても実際に環境保全のための活動につながっていないなどの問題があったためです。そのため、このプロジェクトではベイユーダ村の地域住民全員が環境保全の重要性を認識し、住民自ら持続可能な環境保全型農業と緑化を実践して、ベイユーダ村の土地の地力を高めることを目的としています。
主な活動内容は、地域住民に対して活動参加希望の聞き取り、現地男子校でのネイティブアグロフォレストリー(※)の実践、環境保全型農業の啓発・ワークショップの開催などです。
現在は、アルダ地区内の男子校での森づくりに関するワークショップの開催や、地元住民への電話調査、育苗などの活動を行っています。
(※ネイティブアグロフォレストリーとは、土壌改善による持続可能な土地づくりを普及するため、多種多様な農作物と元来その土地で生えていた在来種の木を植林する混農林業)
▲地元住民の女性たちによる電話調査中に記念撮影
▲エルハムさん(左)と甥っ子のオマル君(中央)
▲男子校でのワークショップの様子(土壌検査)
今回の環境啓発プロジェクトで共に活動するエルハムさんの普段の活動内容と、今プロジェクトに対する思いなどを紹介します。
エルハムさんは地元ベイユーダ村にて小規模なパーマカルチャー(※)の実践を試みながら、地域のコミュニティ開発に取り組んでいる「Balqa creativity Foundation」の代表として活動されており、地域のコミュニティのリーダー的な存在です。特に、ベイユーダ村の在来種の復活のための活動に注力されています。地域に根ざした活動をしているエルハムさんと提携することで、NICCOの事業終了後も継続的で自律的なに地元住民の方に活動なることを期待しています。NICCOは運営体制の構築や継続的に事業の効果を対象地域で発揮できるようにこのプロジェクトを行なっています。
(※パーマカルチャー:人と自然が共存する社会を作るためのデザイン手法)
以下、エルハムさんへのインタビュー内容
▲エルハムさん
・環境啓発プロジェクトに参加することになった理由は?
本プロジェクトの担当者であるNICCOヨルダン事務所駐在員の平間さんから今回のプロジェクトへのお誘いを頂きました。同じビジョンや価値観を持っていたためきっと良いパートナーとして活動していけると思い、今回のプロジェクトへの参加を決めました。平間さんとは、彼がJICAの青年海外協力隊だった時、彼の活動先であった難民キャンプでのパーマカルチャーの活動を通して知り合いました。まだ、今回のベイユーダでのプロジェクトはまだ始まったばかりですが、NICCOの平間さんとまた一緒に活動できていることはすごく嬉しいです。
・このプロジェクトに対するモチベーションは?
今回のプロジェクトに対するモチベーションは大きく2つあります。
1つは同じ価値観を持った人たちと一緒に活動ができることです。ヨルダン内で積極的に活動されている平間さんや森づくりの専門家として今回のプロジェクトに関わっているミドリゼーションの能智さんの存在がモチベーションに繋がっています。
2つ目のモチベーションは家族の地域貢献の歴史を引き継いで行きたいという思いです。これまで私の祖父や父は学校やモスクの建設、下水の整備などを通して積極的にベイユーダ地域に貢献してきました。私は5代目で150年続く家族の歴史を、環境保全や若者、女性のエンパワーメントという形で引き継いでいきたいと思っています。
・本プロジェクトを通してベイユーダ村またはアルダ地区にどのような貢献をしたいですか?
エコシステム(※)やパーマカルチャーの実践を通して、地域のコミュニティ開発に取り組みたいと思います。特に若者への環境問題や環境啓発活動へ関わる機会の提供、女性のエンパワーメントなどに力を入れたいです。また、これまでベイユーダ村に重点を置いて活動してきましたが、今回のプロジェクトを通して、ベイユーダだけではなくアルダ地区全体へインパクトを与えられるような団体に成長したいと思っています。
(※ エコシステム:自然界における生物と、それを取り巻く環境が相互に作用しあって存続する。生産、消費、分解による循環から成り立つバランスの取れたモデル全体を表現している。)
・エルハムさんが目指す最終ゴールは?
グリーンエコノミーやグリーンビジネス(※)をヨルダン内で活発にさせ、以前はあった豊富な自然環境をヨルダンの土地に復活させることが最終的なゴールです。そして日々の活動を通して、若者たちが環境問題に関わる機会を作ること、女性の活躍の場所を創出することにも力を入れていきたいと思います。
また、アルダ地区での達成したい目標は2つあります。1つは、各家庭にグリーンハウスを設置し、野菜やフルーツを栽培できる環境を作ることです。そのために、今回の環境啓発プロジェクトを通して、地域住民のニーズをしっかり汲み取っていきたいと思います。2つ目は、ベイユーダで出来た作物を市場で販売することです。特に、オリーブ、スマック(中東でよく使われるスパイス)などは質も良いためブランド化して行けたら良いなと思っています。
そして、最終的には地元のコミュニティ開発に繋げていきたいです。我々の活動を通して、人々が環境保全(エコシステムなど)について興味を持ち、地域コミュニティも成長していけたら良いなと思っています。
(※ グリーンエコノミー:資源の消費を減らし、再生可能エネルギーに切り替え、自然との共生を目指そうとする新しい考え方
グリーンビジネス:環境の改善に貢献する財やサービスを提供するビジネス)
(インタビュー終わり)
女性の社会進出が遅れているヨルダンにて、地元をよくしたい、ヨルダンの自然環境を改善したいという気持ちで幅広く精力的に活動されているエルハムさんの行動力と情熱に感銘を受けました。NICCOとのプロジェクト期間は3年間のみですが、その間に事業終了後も地元住民の方達で積極的に環境保全活動を通したコミュニティ開発を続けられるような基盤を作っていければ良いなと思います。新規環境啓発プロジェクトについてもご関心を寄せて頂けると幸いです。