こんにちは。インターンの塚田です。今回は現地にて働くスタッフの方からお話を伺いました。
経歴:1987年生。明治大学文学部心理社会学科臨床心理学専攻を卒業後、不登校の子どもたちが通う適応指導教室の先生を務めるかたわら、NICCOにボランティアとして関わる。退職後インターンとなりマラウイへ。スタッフとなりフィリピン、東京事務所勤務を経て2015年3月よりヨルダンに派遣され現在に至る。ヨルダンでは会計ロジ並びにザルカの子ども向け心理社会的ケアを担当。
これまでの経歴を振り返って
塚田:最初は適応指導教室の先生として働いていたとのことですが、なぜそれを始めようと思ったのでしょうか。
永山:元々あまり営利企業で働くことにしっくり来ていなかったんです。大学時代は、成績や周りからの指摘で教員を目指していましたが、あまり熱が入らず、採用試験に受かりませんでした。そんな時に、適応指導教室の募集を見て、「おもしろそうだな」と感じ始めることにしました。
塚田:なぜ興味を惹かれたのでしょうか。
永山:学生時代、非行少年や家庭環境に問題のある児童の寮施設である児童自立支援施設でのボランティア活動や、児童虐待の勉強をしていたのと、教員や臨床心理士の勉強を活かせると思ったことが大きいですね。
塚田:そのころから子どもと接することに興味をもっていたのですか?
永山:いや、大学時代は子どもを好きではなかったですね(笑)けれども自然とそのようになっていますね。
塚田:そこで2年働いてから、NICCOに来られていますが、どうして今度は国際的な仕事に関わろうと思ったのですか?
永山:学生時代にDAYS JAPANという雑誌を読んでおり、戦場ジャーナリストとのイベントなどに参加していました。そのころから国際的な活動に興味があったけれど、そこに飛び込む勇気がありませんでした。適応指導教室での仕事を経て、「好きなことをやっていこう」と決心がつき、フィリピンのスタディーツアーに参加しました。
「何かを良くするのはこちら側の都合。できることは限られている。」
塚田:そこからNICCOに関わることにしたのですね。
永山:フィリピンで見たのは、ゴミ山を解決しようという活動でした。行政側はゴミ山を何とか撤去したいのに対し、そこにいる人々はゴミ山が無くなくなると仕事を失ってしまうんです。何かを良くすることはこちら側の都合。それでもNGOは活動している。そのもやもやから、実際のところを見てみたいと思い、NICCOに入りました。
その後マラウイ、フィリピンの活動を経てヨルダンへ
塚田::マラウイやフィリピンを経てのヨルダンですが、他の事業地と比較して、特徴はありますか?
永山:ナイーブな方が多いと思います。その分、配慮しなければならないことも多いです。
塚田:具体的には?
永山:例えばミーティングする際、まずは褒めるところから入る必要があります。また、何か注意する場合は個別に話し、全体では言わないように心がけています。そうしないと反発を招いてしっかり伝わらないことが多いんです。
塚田:なるほど。そのようにして現地スタッフからの信頼を得るわけですね。永山さんは子どもからもすごく慕われているようにセッションで感じたのですが、心がけていることはありますか?
永山:セッションには全て参加するようにしています。子どもといる時間を増やすことで親しんでもらい、またジョークを言って笑いを取るようにするのも心がけていることです。ファシリテーターの現地スタッフに自分を利用してセッションを盛り上げてもらうようにしています。
積み上げてきたものを、いかにより良くするか、それが自分の仕事。
塚田:仕事をしていてうれしいと感じるのはどんな時ですか?
永山:この事業は何年も続いていて、積み重ねられてきました。その中でいかに改善していくかを考えなければなりません。子ども達とお出かけをするセッションがあるのですが、これまでルーティンで決まっていた場所から変えて、全員で1から議論し、下見を経て決めることにしました。当日は子どもたちだけでなくスタッフも一緒に楽しんでいて嬉しくなりました。
塚田:日本人スタッフとして求められる仕事は何でしょう?
永山:全体を見ることと、交渉です。勿論セッションにおいてこどもたちの表情や態度をしっかり観察することも大事ですが、目の前の子どもだけでなくヨルダン事務所の事業全体、そしてシリア難民全体、地域全体と視点を大きくして見なければなりません。また、現地スタッフだけではうまくいかない交渉も、日本人スタッフがいるから進むこともあります。
塚田:まわりを見ることで現地スタッフが子どもに集中できるようにするんですね。
「隣を良くしたい」と「世界を良くしたい」。想いは同じ。
塚田:どうして日本人がこんな遠くの地域まで支援しなければならないんだという声もあると思いますが、どう思いますか。
永山:私はそう思いません。どこかで世界はつながっています。国内にもたくさん支援を必要としている人もいますが、彼らを助けるのとあまり違いは無いように思います。助ける土壌がある先進国は支援することが義務であり、その役割の一つを自分が与えられたのだと考えています。「隣の人を良くしたい」という想いと、「世界を良くしたい」というのは同じなんです。
子どもたちの人生に何か意味を残していると信じる。そして、全力を尽くす。
塚田:シリアで内戦は続いています。無力感などで仕事でのモチベ―ションを維持することが難しく感じませんか。
永山:確かに、子どもがシリアへ帰っていくと辛く感じます。生きててくれと願うばかりです。けれども、3か月以上もかけて、普通の公立校ではやらないような大きな体験を子どもたちはしています。子どもたちが明るくなったり、コミュニケーションが上手になったり、感じることはあります。彼らの人生に、深いところで確実に影響はあると思いますし、意味を残しているだろうと信じているのです。だからこそ、より良いものを与えられるように全力を尽くしています。
世界の友を大事にしよう。
塚田:最後に、国際協力に関心のある読者の方々にメッセージをお願いします。
永山:世界で何が起こっているのかを知って、是非周りに伝えてほしいです。SNSではなく、直接、興味関心の薄い人にも伝えて、知ってもらうことが大事です。それと、私は、究極的に、みんなが友達になれば世界は救われると思うんです。友達を殺そうとは思わないですよね。いろんな人と友達になってください。
インタビューを振りかえって
記事からは伝わりにくいのですが、永山さんはとても気さくな方で、現地スタッフや子どもからとても慕われています。言語のわからない中で雰囲気や子どもたちの表情、態度をしっかりと読み取り、的確なアドバイスを現地スタッフにすることはとても労力のいることであり、その様子から、この仕事にかける情熱を垣間見ることができました。
このような形で「人」に焦点を当てた記事も書いていこうと思います。
** 厳しい冬を迎えるシリア難民のために **
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