2015年12月28日(月)

インターン日記@ヨルダン「NICCOスタッフインタビュー第2弾(後半)」

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こんにちは。インターンの塚田です。インターン日記@ヨルダン「NICCOスタッフインタビュー第2弾(後半)」に引き続き、現地にて働くスタッフ西田紗璃さんからお話を伺いました。

後半は、NICCOがヨルダンで行なっているシリア難民支援の活動や、日本の皆さまへのメッセージをお伝えしています。(インタビュー前半はこちら

 

支援を通じて、女性たちの生活が、表情が変わった

塚田:仕事の内容を教えていただけますか?

西田:女性の心理社会的ケアのワークショップとそこから派生したJORIA*の運営、ザアタリ難民キャンプでの子供向けワークショップを行っています。

塚田:何か仕事でのエピソードなどありますか?

西田:JORIAについて言えば、まだまだこれから成長していく必要がありますが、本当に女性たちの生活が変わり、表情が変わったんですよね。長期化する難民生活の中で、生きていく希望や自分の価値を失いつつある女性たちが、自分が作った刺繍やお菓子が売れ、娘の大学の学費や、治療費を賄えるようになりました。経済面だけでなく、「私でもできる!」という自信に繋がり前向きになることで、精神面のケアにも繋がっていることが目に見えてわかり、自分たちの支援が生きていることが実感できました。

塚田:裨益者との距離の近さが、NGOで働くことの醍醐味の一つといえますね。

▲JORIAの活動。写真はプロのコックさんに料理を教わりに行った時。

▲JORIAの活動。写真はプロのコックさんに料理を教わりに行った時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*JORIAとは、NICCOの支援から始まった、手作りのオリジナルブランド商品を作成、販売を通じて女性たちのエンパワーメントにつなげるという事業です。詳しくはNICCOの過去のブログをご参照ください。

 

同じものを全く共有していない相手と働くこと。そこに楽しみがある。

塚田:ヨルダンへの印象はどうでしょうか?

西田:国際的なお金が集中していますし、物価は安くないです。でも、皆さん優しいですし、観光資源があることも素晴らしいと思います。アンマンで生活する上で問題はないですね。ただ仕事をする上で、女性ということもあり、服装は気にしますね。肌の露出はなるべく減らすようにしています。あと、挨拶の仕方ですね。相手が男性の場合、相手の出方を見てから、失礼がないように握手をするかどうか見極めています。

塚田:日本とこちらの職場を比べて違いはどうですか?

西田:日本は、全員がある程度同じ教養と似通った価値観を持っていて、共有しているがゆえに、楽な部分もあれば大変な面もありますよね。働いていても、暗黙の了解といいますか、全部言わなくても伝わることが多いです。
それに比べてこちらは、全くそういうことが通用しません。「同じものを何も共有していない相手に対して、どういう風に接して、どういう風に仕事を振って、どういう風にお願いして、どうすればうまくいくのか」とういことを、考える必要があります。そのプロセスが、私は好きなんです。こちらでは、仕事以前に人間対人間。仕事だけでなく人間関係を如何に構築するか、その人をゼロから見て、相手にも私という人間を理解してもらい、国籍、性別、文化等を超えて分かり合うことに楽しさを感じています。

塚田:信頼関係も一から作り上げないといけないですよね。好奇心に基づいて新たな環境にポンっと飛び込んでいく、西田さんの原動力が垣間見えますね。女性と子どもというたくさんのコンポーネントを抱えていますが、大変だなあと感じることはありませんか?

西田:そこまでありませんね、仕事に対する「なんとかなる」といういい意味での楽観的な姿勢はこちらで培った気がします、1年半の間に、日本人であることを踏まえつつ、ヨルダンナイズされているんですね。性にあっていたのかもしれません。

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▲同僚たちとのランチタイム

 

 

 

 

 

 

 

 

イメージでプラスに捉えられる、それが日本の支援の価値

塚田:日本人がこの支援に関わる意味というのはあると思いますか?日本の皆さんからすると、どうしてもシリアというのは遠いイメージですが。

西田:日本だと国際的なニュースは単発的ですよね。なので、なかなか何が起こっているのか理解しにくく、それ故に遠く感じているのかなと思います。
今年ISに日本人が拘束されて殺害されてしまったときのように、一時的に関心は高まりますが、その背景やISって?ということをご存じの方は少ないような気がします。そこをきちんと整理すればもっとシリアとかヨルダンで起こっていることを他人事として感じなくなると思うんです。
また、日本が支援に入ることは、プラスになると思うんです。例えばアメリカとか、フランスとか、フランスでは風刺画事件がありましたよね。こっちの人からするとあまり国のイメージが良くないことがあるんです。その点日本という国は、ハイテクで質がいい商品を生産する国、勤勉な国というイメージがあって、マイナスに捉えられることはないんですよね。日本の団体というだけで、信頼してもらえ、相手も支援を受け取りやすいと思います。そこが日本人が支援に入ることの強みじゃないでしょうか。

▲ザアタリ難民キャンプの子どもたちとのスポーツセッションの様子。子どもたちからは「サリ」と名前を連呼されるほど親しまれている。

▲ザアタリ難民キャンプの子どもたちとのスポーツセッションの様子。子どもたちからは「サリ」と名前を連呼されるほど親しまれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無関心はやめて」~途方に暮れるくらいの問題が世界にはある~

塚田:最後に日本の人々へのメッセージをお願いします。

西田:「無関心をやめてください」ですかね。無関心って、ひどいですよね。だってその人のこととか、世界で起こっていることを知りたくない、どうでもいいということですよね。遠い国のことかもしれないですけど、ISの事件があったように何らかの形で絶対関わっていると思うんです。日本にもムスリムの方はいらっしゃいますし、そんな遠い話ではないんですよ。

塚田:確かに、関心は大事ですよね。でも、いろんなことに関心を持つことってすごく体力を使うじゃないですか。難民一つにしても、アフリカにもいれば、ヨーロッパ、ここもそうですし、東南アジアや、もっと言えば日本国内に逃れてきた人がいる。一つ一つに関心を払っていると、限りがなくて途方に暮れてしまうなあと僕はあきらめてしまうのですが…

西田:「途方に暮れるくらいの問題がこの世界にはある」ということも、知ってほしいです。それに気づくだけでも、大きな一歩だと思うんです。無関心より断然いいはずです。何もしなくてもいいんですよ。ただ、ちょっとでも関心を向けてほしいんです。それに、東日本大震災の時、遠い国々の方々から支援をいっぱいもらっていたと思います。それで、今回遠い国の人々がピンチになっている…。他人面するのはおかしいですよね。

塚田:なるほど。「いっそ途方に暮れたほうがまし」という考えはありませんでした。何事も他人事と捉えずに向き合うことが大事ですね、学生の方へのメッセージはありますか?

西田:勉強してくださいですかね(笑)大人になってからもっとしておけばよかった~と後悔します。今の時間を如何に使うかで皆さんの将来が決まってきますから。

塚田:心が痛くなるご指摘ありがとうございます。

▲どんなに忙しくても、子どもたちの前では笑顔を絶やさない。

▲どんなに忙しくても、子どもたちの前では笑顔を絶やさない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インタビューを振り返って

なかなか異色な経歴の西田さんでしたが、英語も完璧で、現地スタッフからも慕われるなど、自分も彼女のようにしっかりと勉強して国際社会で活躍できる人間にならなければなと思います。
また、インタビューを通じて、好奇心、関心、行動力という言葉が伝わってきました。特に「無関心はやめてください」と言い切るところに、視野を広げ、好奇心に従って飛び込んできた彼女らしさがあると感じました。
私も、支援が届かないことよりも怖いのは、関心を持たれないことだと思います。国際社会から取り残されることほど恐ろしいことはありません。皆さんの関心そのものが、情勢を動かし、問題解決、根本原因である紛争の停止につながっていくのだと思います。

 

現在、西田さんが活動するシリア難民支援への「年末年始助け合い募金」を募集しています。
厳しい冬を迎えるシリア難民のために、ご協力をよろしくお願いいたします。

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