2016年01月06日(水)

インターン日記@ヨルダン「アラビア語教室が始まるまで(前半)」

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今回は新しく始まったシリア難民の子どもたちへのインフォーマルアラビア語教室について、事業が開始されるまでを紹介します。事業の始まりとそれに関わる現地スタッフの働きを通じて、NGOの仕事を知ってもらえれば幸いです。

 

1.二ーズを把握する~なぜアラビア語教室を始めるのか~

photo1_blog5 なぜ、シリア難民の子どもたちに対してアラビア語教室を開く必要があるのでしょうか。それを理解していただきためには、ヨルダン国内の公立学校の現状についてお話する必要があります。大量のシリア難民の子どもたちの受け入れに当たり、ヨルダン政府は公立学校を午前と午後に分け、彼らを受け入れるようになりました。しかしながら突然生徒数が倍近くに増えるわけですから、十分な教育が提供できるわけではありません。写真は、実際に訪問した学校の様子です。1クラスの人数はなんと80人。全てシリア人の子どもです。写真の日はこれでも20人の欠席で、1つの机に3人から4人がぎゅうぎゅうに座っています。多い時は一つの机に5人が詰めて座るそうで、先生方の疲労困憊する様が伝わってきました。

 また、シリア難民の中には、長い紛争のために学校に通えず、文字の読み書きを忘れてしまったまま、ヨルダンに避難してきた子どもたちもいます。そのような子どもたちが、すし詰めの教室で満足に授業を受けることは非常に難しいと言わざるを得ません。このような状況のため、NICCOに支援を求める人々のアンケートでは、子どもへの英語教室だけでなく、アラビア語教室を開いてほしいとの回答が多く寄せられていました。そこで、そうした声に応えるべく新しくアラビア語の教室を開くことになったのです。

 

2.準備すべきものを考える ~誰が、いつ、どこで、どのように、誰に?~

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スタッフで会議をして今後の準備などを決めていく。

 さて、いざアラビア語教室を始めるといっても、突然始められるわけではありません。まず何が必要なのか考えます。誰が教えるのか、いつ教えるのか、どこで教えるのか、どうやって教えるのか、そして、誰に教えるのか、です。
 私たちは、まず先生の募集をかけ、面接をしたのちに採用します。その後、採用した先生と相談して、教室に参加したい子どもたちのアラビア語のレベルを測るためのテストを作ります。このテストを子どもたちに受けてもらい、アラビア語のレベルにより彼らを振り分けます。そして、もっともボリュームの多い層を対象に教室を開くことにしたのです。場所は幸いにも以前から女性向けプログラムで使われていた場所にスペースがあったので、そこを利用することができました。こうして準備すべきことを明確にし、ひとつひとつ片付けていきます。

 

3.必要なことを用意する ~インタビューから大掃除まで~

(1) 人 「こども、先生」
 先生の募集ですが、まずスタッフの人脈でアラビア語の先生を探しました。6,7人の候補者が集まり、面接で選抜します。私は初めて面接官役を行いました。といってもほとんど座って話を聞いているだけでしたが…。一体どんなことを聞くのだろうかと思っていたのですが、団体のことを知っているかから始まり、どんな仕事をしてきたか、子どもたちを1クラス何人までコントロールできるか、どんな工夫をして授業をするか、など実践的なものが多かったです。最終的に、子どもへの教育経験を重視して1人の女性にお願いすることになりました。
 教室に参加する子どもたちは、NICCOの物資配布先リストに登録している難民のうち、アラビア語を子どもに習わせたいという要望がある方々をリストアップしていたので、その中から選ぶこととなりました。

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みんなで相談して作ったアラビア語のテスト。イラストを用いるなど工夫が見られる。

(2) 物 「テスト」
 次に、物です。生徒たちのレベルを測るテストから、連絡先リスト、テストの日程、スケジュールなど、細かいものを用意していきます。日本人スタッフは、どのように関わるか、どのような方向性のテストにするかなど、全体を見ながら現地スタッフと相談しつつ進めていきます。テストは、どんなレベルの子も幅広く実力を測れるように、先生と相談しながら作りました。また子どもたちの学校の時間に合わせてテストの時間帯を設定し、30人近くの子どもたちにテストを実施することになりました。

(3) 場所「教室の大掃除」
 場所があるからといって、そこがそのまま使えるとは限りません。長らく使われていなかった部屋だったため、大掃除が必要でした。子ども向け事業のスタッフ全員で掃除を行いました。このような泥臭い仕事も、NGOならではかもしれません。

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机を運び出し、埃だらけの椅子を雑巾がけしていきます。

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~後半は(1月12日公開予定)に続きます~

現在、シリア難民支援への「年末年始助け合い募金」を募集しています。
厳しい冬を迎えるシリア難民のために、ご協力をよろしくお願いいたします。

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