マルハバ!(こんにちは!)
NICCOヨルダン事務所インターンの稲垣です。
夏はまったく雨が降らないヨルダンですが、いまは雨期なので時々雨が降ったりしています。寒くて雨だと部屋に籠りがちになってしまいますね。
今回はシリア難民及びヨルダン貧困層の子どもたちを対象とした心理社会的ワークショップの一環として行なったDayTripの様子についてレポートします。
DayTripとは簡単に言うと遠足です。子どもたちは普段、心理社会的ケアとして演劇や英語のワークショップを行なっているのですが、毎回室内で同じことを繰り返していると子どもたちも飽きてしまいます。そこで、いつもとは違う環境で、子どもたちに気分をリフレッシュしてもらうと同時に、グループでの行動を通じてお互いの理解と連帯感を深め、協調性や社会性を養うことを目的としています。もちろん、生活環境が厳しく、辛い思い出が多い子どもたちに楽しい経験をしてもらいたいという意図もあります。
今回のDayTripの行き先はヨルダンの首都アンマンです。まずはDayTripの事前準備として、現地スタッフと一緒に候補地の下見に行きます。
候補地は過去に訪問して好評だった場所や、口コミで評判の施設などから選び、今回はチルドレンズミュージアムとスポーツセンター(体育館)、そして遊園地を下見に訪れました。
ちなみにチルドレンズミュージアムとは、子ども向け体験学習型の展示とプログラムを提供する教育施設で、日本でいうところのキッザニア東京やキッズプラザ大阪のような施設になります。下見では、広報担当者や管理者と施設を見て回り、子どもたちが楽しめるか、安全面はどうか、などを調査しました。また値段の確認や各施設間の移動時間などのチェックも行ないました。
すべての施設の下見を終えた後、ミーティングで行き先を決定します。子どもに一番人気のありそうな遊園地も候補として良かったのですが、当日は雨予報ということもあり、室内で遊べるチルドレンズミュージアムとスポーツセンターに決定しました。
しかしDayTrip当日に、急遽スポーツセンターが使えないことになってしまい、雨が降っても楽しめる、以前訪れて評判が良かった、という理由からアンマン市内の動物園に変更になりました。
そんなトラブルもよそに、子どもたちがバスに乗ってアンマンにやってきました。みんな首都のアンマンにやってきたということでテンションが高く、いつも以上に元気いっぱいでした。
まずはチルドレンズミュージアムを訪れました。中学生もいるので、みんなが楽しめるかなと心配をしていましたが、チルドレンズミュージアムは展示も豊富で、趣向を凝らしたプログラムも多く、子どもたちはみんな、時に笑顔で、時に驚いた表情で館内を見て回っていました。はぐれた子や、輪の中に入ることができない子は現地スタッフが上手にサポートしてくれていました。
チルドレンズミュージアムは普通の博物館と違って、子どもたちが実際にさわれる展示が多く、子どもたちも好奇心をそそられ、刺激を受けているようでした。またスーパーや車の修理工場、テレビ局などの職業体験コーナーもあり、真剣にかつ楽しそうに店員やアナウンサーを演じている子どもたちが微笑ましかったです。
チルドレンズミュージアムでは、子どもたちの学ぶことの喜びにあふれた顔が印象的で、知見が広がったのではないかと感じました。シリア難民やヨルダン貧困層の子どもたちは普段限られた環境の中で生活していて、勉強も閉塞的になりがちです。こういった場所で刺激を受け、視野を広げたことが、何か良いきっかけになればいいなと思います。
1時間半ほど滞在したチルドレンズミュージアムを後にして、次の目的地へ。移動中のバスの中も子どもたちは元気いっぱいで歌ったり踊ったりの大騒ぎでしたが、なんとか無事に動物園に到着。心配していた天気も曇天から時折日差しが差し込むぐらいまで持ち直しました。きっと日本からきた晴れ男の力でしょう。
この動物園には少しだけ遊園地のアトラクションも併設しており、まずは遊具で遊ぶことになりました。絶叫系のアトラクションに興味を惹かれる子どもたちが多く、小さなジェットコースターやバイキング船で興奮の渦に。一番人気は小さい子どもたちも遊べるゴーカートで、普段はおとなしい子まで笑顔が弾けていました。
その後、動物園を見学。いままでにあまり動物を見たことがないのか、みんな興味津々。定番のライオン、トラ、猿、白熊などを見て、再び大盛り上がりでした。動物園が初めてという子どもたちもいて、写真やイラストではないリアルな動物たちに、興奮したり驚いたり怖がったりと、その仕草一つひとつがとても可愛らしかったです。
遊具で気持ち悪くなった子どものサポートや動物たちの説明など、現地スタッフの活躍もあり、動物園でも終始笑顔が絶えることがなかったのが印象的でした。
結局、最後まで雨は降ることなく無事にDayTripを終えることができました。帰り道は笑顔とおしゃべりが絶えることがなく、普段より自己表現が豊かになった気がします。きっとこの夜、家族とDayTripの話で盛り上がり、避難生活の過酷さを一瞬でも紛らわすことができたでしょう。DayTripは準備や引率が大変でしたが、何を見ても何をしても楽しそうな子どもたちの純粋な心に、こちらまで癒される一日となりました。
わずか一日でしたが、少しでも子どもたちの心の傷が癒え、新たな活力を得て、またワークショップに元気な姿でやってきてくれるのを心待ちにしています。