2016年05月24日(火)

インターン日記@ヨルダン「演劇特化プログラムレポート」

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マルハバ!(こんにちは!)

NICCOヨルダン事務所インターンの稲垣です。

ヨルダンから、今回は演劇特化プログラムの公演の様子についてレポートします。

 

演劇特化プログラムとは、いままでにNICCOが行なってきた子ども向け心理社会的ワークショップの参加者の中から、演劇セッションに積極的であり、かつ演技の能力が高い子どもたちを集め、これまでよりも質を高めた演劇をヨルダンの各地で公演するというプログラムです。

このプログラムの目的は、まずは参加者のストレスの軽減やトラウマの予防といった心理社会的ケア。さらに、啓発活動のひとつとして、シリア難民の置かれている現状やその心情を、ヨルダンのコミュニティに伝えていくこと。また、シリア難民とヨルダン人貧困層の子どもたちがほぼ同数ずつ参加していることから、国籍の枠を超えた友情を育むことも目指しています。

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▲演劇の練習の様子

 

今回は、ヨルダンの首都であるアンマン市で2公演、NICCOの活動の中心地であるザルカ市で2公演の計4公演を、2週に渡って行ないました。

参加者の子どもたちは、この公演のために約4ヶ月間ずっと練習を重ねてきました。ヨルダンで活躍している本物の俳優とディレクターを講師に招き、指導にあたってもらいました。

普段NICCOが行なっている子ども向け心理社会的ワークショップの演劇セッションでは、子どもたちは笑ったり騒いだりと和気藹々とした雰囲気の中で行なわれていますが、この演劇特化プログラムでは、良い意味で緊張感のあるセッションが行なわれていました。

子どもたちは真面目な顔で演劇の練習に取り組み、ディレクターからも厳しい指示がとんでいました。初めて練習風景を見た時は日本の体育会系の部活のようだと感じました。

時には張り詰めた空気の中、泣き出す子どももいましたが、それでも真剣に、そしてひたむきに演劇に取り組んでいたのが、とても印象的でした。

 

 

そして迎えた本番。まずはアンマンの劇場にて初演が行なわれました。

劇場にはヨルダン人やシリア難民、さらにその他の外国人なども観劇に訪れ、立ち見も出るほどの大入りとなりました。

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▲控え室でもいつもと変わらずマイペース

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▲どんな時でも笑顔の少女

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▲満員御礼となった劇場

 

ついに始まった本番では、子どもたちは練習の成果をいかんなく発揮し、堂々とした演技をしていました。しっかりと役に入り込んでいるその姿を見て、本当に凄いなと感心したのを覚えています。度胸があり感情豊かで人懐っこいシリアやヨルダンの子どもたちには、演劇というもの自体が向いているのかもしれません。

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▲子どもたちは堂々とした演技を見せてくれました

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▲この真剣な表情に魅せられます

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▲観客の人たちも劇に入り込んでいました

 

本番終了後、会場はスタンディングオベーションとなり、観客からは多くの賞賛をいただくことができました。この数ヶ月、練習風景から会場の設営、公演に向けての様々な準備を見続けて、ここに至るまでの子どもたちの努力、裏で支え続けた現地スタッフと日本人スタッフ、多くの人の力が合わさって素晴らしい舞台が完成したのだと強く感じました。

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▲本番後にヨルダンのテレビ局からインタビューを受ける参加者

 

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▲本番が終わってリラックスモードの俳優さんと参加者

 

翌週にはザルカ公演が行なわれ、初日には最高となる400人以上の観客が詰めかけました。ザルカ公演では周辺のヨルダン人だけでなく、参加者の家族や友人も多く訪れ、我が子や友人たちの演技に見入っていました。参加者の子どもたちも回を重ねるごとに完成度を上げていき、親や友人の前で気合の入った演技を見せていました。

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▲家族が来ていることもあり、子どもたちもいつも以上に気合が入っています

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▲悪役の子どもたちも良い表情をしています

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▲劇の最後はみんなで歌を歌って締めます

 

ザルカ公演でも拍手喝采をいただき、演者と観客、シリア人とヨルダン人そして日本人が一体となった素晴らしい空間を作ることができました。

 

公演最終日には公演後、演劇特化プログラムの修了式が行なわれ、子どもたちに修了証書が手渡されました。いつの時も旅立っていく子どもたちを見送るのは寂しいものですが、彼らがこの先、何かひとつのものに打ち込んだというこの経験を糧に、どんな環境にも負けることなく逞しく成長していってほしいものです。

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▲いつも厳しかったディレクターから満面の笑顔で修了証書を渡される参加者

 

演劇特化プログラムは心理社会的ケアという側面だけではなく、達成感、一体感など日本の熱血で青春な部活動的ノリを感じました。またシリア人とヨルダン人の子どもたちが手を取り協力してひとつの作品を作り上げたことは、かけがえのない友情を育んだことと思います。

そして公演に多く方が足を運んでくれたことにより、共生や平和の想いを共有し、コミュニティでの軋轢と緊張を緩和することができたのではないでしょうか。この演劇特化プログラムが僅かながらでもシリアとヨルダン両国の助けになれば幸いです。

 

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▲全4公演を無事に終え、みんなで記念撮影