2016年07月06日(水)

カウンセリング事業について

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ヨルダン事務所の安田真司です。本日は、NICCOが、シリア難民とヨルダン人貧困層の方を対象としてザルカで実施している、カウンセリング事業について紹介したいと思います。

 

現在、当センターが実施しているカウンセリング事業では、精神科医1名と臨床心理士2名、そしてソーシャル・ワーカー1名が、シリア難民やヨルダン人貧困層の方が抱えている様々なこころの問題に対して、解決のためのお手伝いをしています。その中で、特に、遠隔地に居住する方や、精神保健上の潜在的リスクが認められる方に対しては、家庭訪問を通したカウンセリングを行っています。

 

先日、当センターのソーシャル・ワーカーと、カウンセリング事業の統括を行う日本人専門家の家庭訪問に、私も同行しました。当日は日中の気温が36度まで上昇し、乾いた砂塵の舞う、中東らしい厳しい一日でした。

私たちは合計3軒の家庭を訪問し、カウンセリング対象者との面談を行いました。当然のことながら、カウンセリングは全編アラビア語で行われるため、合間にアラビア語ができる日本人専門家に基本的な情報についての通訳をしてもらい、大まかなバックグラウンドなどを聞くことができました。

s_s_In the area where we paid a visit

 

 

 

 

 

 

 

写真:家庭訪問先周辺

 

その翌日、ソーシャル・ワーカーと日本人専門家にお時間をとってもらい、詳細を知ることになりました。私は、患者さんがシリア紛争を通して経験されたことや、現在抱えている問題を聞くにつけ、非常にやり場のない感情に襲われました。

シリアでの肉親あるいは配偶者の死、体制派による捕囚と脅迫、見知らぬ土地での厳しい避難生活、劣悪な居住環境と貧困。その結果、頭痛や悪夢、突然の悲鳴、夜尿症などの症状が発症し、幼い子どもほど、フィジカルな影響が生じるとのことです。

聞き終わった後、私はソーシャル・ワーカーに、「このような厳しい症例を何百何千と目の当たりにして、あなた自身、辛くはならないのですか」と質問しました。彼女はこのように答えました。

「峻烈な体験をした人を目の当たりにした時、泣きたい気持ちになるということはよくわかります。それは生身の人間として当然の反応だと思います。ですが、私は、プロフェッショナルのカウンセラーとして、そのような態度を決して患者さんに見せないようにしています。患者さんにとって必要なことは、安直な同情を受けることなどではなく、現在抱えているこころの問題を認識し、人生の明るい面を信じて、歩みを進めることなのです。私はそのために冷静に患者さんと向き合っています」

カウンセリング中、彼女が時に笑顔を見せながら患者さんの話に耳を傾け、落ち着いた声で話をしていたことを、私は思い出しました。

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写真:ソーシャル・ワーカーであるレイラのカウンセリングの様子1

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写真:ソーシャル・ワーカーであるレイラのカウンセリングの様子2

 

2012年にNICCOがシリア難民とヨルダン人貧困層のためにザルカ支援センターを開設して以降、私たちは延べ5,341名*の患者さんにカウンセリング・サービスを提供してきました。しかしながら、未だに多くの方が、極めて深刻な精神上の問題を抱えて、日々、NICCOのセンターを訪れています。*2016年3月31日時点

 

4月28日の報道によると、ジュネーブで行われている和平協議が、停戦の危機的状況を受けて、一時的に中断されることとなりました。数週間ぶりに開始した大規模な戦闘行為によって、すでに数十名の民間人が命を落としています。

 

私たちは引き続きこのザルカにて、紛争や貧困によって、こころに大きな傷を抱えた方々に対する支援を行っていきます。