マルハバ(こんにちは)!ヨルダン事務所インターンの國崎です。
NICCOヨルダン事務所の女性向けプログラムは、刺繍や編み物といった手工芸だけではなく、英語教室とPC教室を加えた三本柱で運営されています。
成人女性向け英語教室は、2015年4月からスタートし、現在第5ターム目を実施しています。初心者から上級までがあり、約60人の女性たちが学んでいます。ヨルダン人、シリア人の割合はほぼ半々です。また、生徒の年齢層は10~50代と幅広く、子どもを連れてやってくるお母さんも少なくありません。
▲授業風景。右手前で満面の笑顔を見せるのは、講師を務めるイマーン先生
シリアでは、2000年にアサド大統領が就任して以降、外国語教育が重視され、初等教育第1学年から英語を、中等教育第1学年からはロシア語かフランス語を学ぶことが必修になりましたが、かつては初等教育第5学年時から英語もしくはフランス語の選択することになっていました。生徒の中には、英語を学んだことのない人はもちろん、内戦と避難生活の影響で十分に英語教育を受けられなかった10代後半の女性たちも混ざっています。普通教育で英語を必修するヨルダン人に比べ、シリア人にとって英語習得は大きなチャレンジなのです。
しかし、ヨルダン国内での生活もそうですが、とりわけ第三国への移住を視野に入れた場合、英語ができるかどうかでその後の暮らしに差が生じます。特に女性たちにとっては、避難生活の長期化で滞りがちな子どもの学習に対して責任を感じ、自宅で子どもに英語を教えるために自分自身が一生懸命学んでいる、というケースが多いようです。実際、初級クラスの女性にお話を伺ったところ、教えるまではいかなくても、子どもと一緒に勉強しているんだという声を聞きました。
イマーン先生は言います。「女性たちが子どもに対して責任があるように、そんな彼女たちを教える私にも責任があると感じています」。明るく親しみやすいイマーン先生の人柄のおかげで、授業中は笑顔が絶えず、終わった後もおしゃれや子どもの話題に花を咲かせることの多い彼女たちですが、学ぶ側も教える側もこのような思いを内に秘めて授業に臨んでいるのです。
▲左から順に初級、中級、上級クラスの教材例
ある日の初級クラスでは、果物と野菜を表す単語について学んでいました。そこで私もレジュメを1枚もらい、生徒の皆さんとは逆にアラビア語の単語を覚えることにしました。
▲女性たちと一緒に机を囲みました
女性たちにとっての英語がそうであるように、私にとってアラビア語は未知への挑戦です。新しい言葉を知る喜びと驚きを同時に分かち合うことで、見学していたときよりもぐっと距離が縮まった気がしました。
言葉の壁がある私には、直接女性たちの役に立ったり、心を癒したりすることはなかなかできないかもしれません。けれども、同じ生徒という立場で励まし合うこともひとつの支援の形なのではないかと思います。
イマーン先生は取材の中で、”knowledge is power”(知は力なり)を座右の銘にしていると教えてくれました。まさにこの教室を指している言葉ではないでしょうか。語学が与えてくれる新しい世界や様々な可能性を、私も身をもって実感しています。ここで英語を学ぶ女性たちにも、力をたくさん蓄えて、自分のために、そして家族のためにその力を発揮してほしいと思います。