2020年02月11日(火)

シリア難民支援の現場から日本の皆さんへ

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こんにちは!
NICCOヨルダン事務所でインターン中の児島です。

今回は難民キャンプの外で暮らすシリア難民の方たちの現状をお届けしたいと思います。

現在ヨルダンでは、約65万人のシリア難民の方たちがUNHCRによる難民登録を受けています。そのうち、80%以上のシリア難民の方が難民キャンプの外(首都のアンマンを始め、近隣の地域)で生活をしています。ヨルダンの冬は寒さが厳しく、防寒具の用意や暖房光熱費の支払いなどで他の季節よりも支出が増えるため、冬期は特に厳しい生活を送っています。(※1)
NICCOは彼らの冬期における生活状況の緩和を目指した支援として現金給付を行っています。

【劣悪な住環境】

 

写真①4人家族のAさん宅

NICCOの現金給付事業では、まず電話掛けによってシリア難民の方々の生活状況の調査を行います。そこで、冬期の生活状況に関する様々な聞き取りを通して、対象となるシリア難民の方が、NICCOの現金給付の対象として適切かを判断しています。また、一部の家庭に対しては、実際にNICCOスタッフが各家庭に足を運び、生活実態を調査することで、電話掛けで聞き取った内容の確認をします。
こうした家庭訪問の中で、一番に目が行くのは、彼らがどのような場所で生活を送っているのか、ということです。視覚的な情報(部屋の内装や広さ、明るさ)から聴覚的な情報(騒音や部屋の匂い)まで、実際に各家庭を訪れることで、彼らの住環境をリアルに理解することが出来ます。上記の写真はアンマン郊外にて、地下の一室に暮らすシリア難民Aさんの部屋です。訪れた際に鼻を刺すような匂いがしました。部屋の中にあるマンホールの下に下水が流れていることが(写真右下)原因でした。湿った空気が淀む部屋で、Aさんは3人の子供と生活を送っています。

 

【子どもの笑顔】

写真② 人懐っこいシリア難民の子どもに、思わず笑顔になるNICCOのボランティア

家庭訪問では、彼らの悲しい過去や厳しい現状に目を逸らしたくなる場面がいくつもあります。更には、シリアに戻れる日は来るのか、今後どのように生活を築いていくのか、子どもは教育を受けられるのかといった、漠然とした将来に対する不安も多く聞かれます。こうしたシリア難民の方たちの声に耳を傾ける中で(多い日は1日に8家庭を訪れます)、私自身、そしてNICCOボランティアたちの間で、空気が沈んでしまうこともしばしばあります。しかし、そんな中でも明るい子どもの笑顔に救われる瞬間がたくさんあり、彼らの笑顔を見る度に、この笑顔を守り続けるためにも懸命に活動を続けていこうと、前向きな気持ちになります。

 

【シリア難民のMさんの話】

Mさん一家は、シリア北東部に位置するハサカより2015年にヨルダンへ逃れてきました。
当初は難民キャンプで生活をするも、朝起きたときから1日の終わりを自分の部屋でただ待つ単調な日々に疲れ、「生かされる」生活から自分達で「生きていく」生活を求め、キャンプを出ることを決めたと話します。現在は、ヨルダンの首都アンマンの郊外で生活をしています。

仕事を見つけるのが難しいヨルダンで、Mさんは幸いにもバイクのメンテナンスを行う仕事を見つけ、月150JD(24,000円)を稼ぎます。しかし、稼ぎの大半は1ヶ月の家賃140JD(22,400円)の支払いで無くなり、4人の子どものうち、長男がスーパーマーケットで働くことで生活を助けているそうです。17歳の彼は就学年齢でありますが、家族が生活するために働く必要があります。他の3人の子どもも就学年齢であるにも関わらず、学校に通うための交通費を捻出出来ないため、教育を受けられていない状況にあります。

また、Mさんの妻からは近所との付き合いが一切なく、近くに頼れる親戚や友人も居ない環境で、孤独に苦しむ辛さを伺いました。休日にどこかへ出かける余裕もなく、周りで暮らす他のヨルダン人の家庭のようにレストランで食事を楽しむことも出来ないと、涙を流しながら話してくれました。


写真③Mさん一家とNICCOボランティア

ヨルダンの冬は雨季と重なるため、とても冷え込みます。この日も外では雨が降り部屋は冷え込んでいましたが、温かく甘い紅茶をご馳走になり、心身ともに温まりました。

【終わりに】
シリア内戦が始まり今年で9年が経ちます。避難生活が長期化する中で、Mさん一家への家庭訪問からは、経済状況の厳しさ、子どもの教育問題、急激な環境変化による心の健康問題といった、様々な困難を抱えていることがわかりました。また他の家庭からは、家賃、医療費を含む生活費の工面、就職難による不安定な生活基盤、高齢家族のケアに至るまで、貧困からくるありとあらゆる苦しさを聞きました。こうした様々な問題を抱えるシリア難民の方たちに共通するのは、日々の生活に追われ、ヨルダンの寒い冬を安心して暮らすための経済的余裕すらないということです。
NICCOは現在、各家庭の多様なニーズに応じるため、現金給付事業を通じてシリア難民の方たちの冬期の生活環境の改善に貢献しています。私たちの行う現金給付でブランケットやマットを購入したいと話してくれたMさん一家に、少しでも多くの暖かさが届いたらと思います。


写真④スタッフ・ボランティア集合写真(NICCOヨルダン事務所にて)

【イベントのお知らせ】

2020年2月14日(金)〜17日(月)
京都高島屋7階グランドホール(入場料無料)でNICCOが後援する「第30回ニッコーを支えるチャリティ・オークション 芸術家と文化人の作品展」が開催されます。

今回の収益金は台風19号の被災者支援、シリア難民支援などに活用されます。
日本から出来る支援があります。ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。

イベント詳細はこちらから↓
公式HP http://www.nicco-auction.jp/

(※1)UNHCRより難民登録を受けたシリア難民は約65万人。うち約53万人が難民キャンプの外で生活を送る。以上の数値はUNHCRの資料を参照
https://data2.unhcr.org/en/situations/syria/location/36