こんにちは、ケニア事務所インターンの朝比奈です。ケニアに来てからあっという間に2か月が過ぎ、先週日本に帰国しました。時の流れの速さに驚きを隠せません。しかし近いうちにまたケニアに戻ってくるぞと今から決意しています。
さて今回はNICCOの代名詞ともいえる事業の1つ、エコロジカルサニテーショントイレ(通称、エコサントイレ)とエコサンビルダー(エコサントイレを建設する職人)についてお伝えしたいと思います。
エコサントイレは地面の上に立てた高床式のトイレで、雨で便や尿が流れ出さず、汚水による水資源や土地の汚染を防ぐことができます。便は排便のたびに灰をかけ、便槽に溜まった後、半年間ほど寝かせて殺菌し、たい肥として土に還します。また、便と分けて回収する尿は水で薄めて液肥として利用します。エコサントイレからとれる肥料は、収穫量を肥料なしの畑よりも1.2~2.5倍に増やし、また高価な化学肥料の使用を減らすことができます。
NICCOは多くの途上国でエコサントイレを普及させるべく活動しており、NICCO全体で1335基ほど、ケニアでは2015-2021年併せて245基(2022年1月時点)を建設してきました。ちなみに1基立てるのにかかる費用は3万~5万円ほどです。(エコサントイレについての詳しい記事は過去のケニアブログもご参照ください。)
今回はそんなエコサントイレを建設する職人である、「エコサンビルダー」にインタビューを行いました。
今回インタビューしたのは、1年前にエコサンビルダーになったJosphat(ジョスファト)さん。エコサントイレの作り方や使い方、エコサンビルダーになった経緯などを伺いました。Josphatさんは英語を話せないため、ケニア事務所のスタッフかつエコサントイレ事業の統括であるGeoffrey(ジョフリー)が通訳してくれました。以下、インタビュー全文です。
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〈インタビュー全文 和訳〉
私:まず初めに、何とお呼びすればいいですか?
J:Josphat(ジョスファト)です。
私:私の名前はMio Akirny*2です。今日はよろしくお願いします。では早速、ジョスファトさんはいつエコサンビルダーになったんですか?
J:いつなったかは忘れたけど、大体1年前くらいです。
私:エコサントイレを建てるのに、何日かかりますか?
J:8日から10日くらいです。時間がかかるときは10日かかるから、最大10日間、最短で8日間です。
私:どうやってエコサントイレを建てるのか教えていただけますか?いくつプロセスがあるのですか?
J:初日はまず土台を準備します。2日目には部屋の骨格を造ります。3日目にはslapの山を造り、平らになるようにします。5日目からは小屋、6日目は屋根を建設します。7日目には壁や天井に漆喰を塗ります。
私:今日は何日目ですか?
J:今日は2日目です。
私:ありがとうございます。ちなみに、ジョスファトさんはこれまで何回エコサントイレの建設をしてきましたか?
J:6回です。
私:なるほど。ジョスファトさんがどうやってエコサン・ビルダーになったのかにも興味があるのですが、何か訓練を受けたんでしょうか?
J:はい。ジョフリーさんはそのうちの1人ですが、他にも(訓練してくれた人が)います。
私:そうなんですね。もし私がエコサン・ビルダーになりたかったら、ジョフリーが教えてくれたらなれるでしょうか?
G:それは難しいです。なぜならビルダーになるには職人として筋肉がないといけませんから。筋力がないと何も運べません。訓練が終わったら計測の仕方などを教えますが、(ビルダーになるには)技術だけでなく筋力も必要になります。
私:分かりました。では次の質問です。1年前、ジョスファトさんはなぜエコサンビルダーになったのですか?
J:私には建築の技術があり、それ(エコサントイレ)は新しい技術だと思ったからです。
私:それでは(大工として)他にも仕事をされているんですね?
J:これ(エコサントイレの建設)はたまにしかありません。生活があるので、別の場所でも働かねばなりません。
私:そうですよね。では次に、建設が終わった後、エコサントイレをどのように使うのか、簡単に教えていただけますか?
G:これは私が答えましょう。トイレの建設が終わったら、キュアリングと呼ばれるものを待ちます。キュアリングとはトイレを乾かすための期間です。乾燥が終わったら、トイレの準備は完了です。その後(トイレを建設した)家の人たちを集め、ワークショップを行います。ワークショップではエコサントイレがどのように機能するのか、トイレの使い方やメンテナンス方法などについて説明します。これ(エコサントイレ)は(彼らにとっては)新しい技術なので、トイレがいっぱいになったときどうすべきか、などの助言もします。また彼らが訪問者にトイレの正しい使い方を教えられるよう、使い方を指導しています。ワークショップの後は、肥料にするためにどのように水を混ぜるのか、といったエコサントイレから出た排せつ物の再利用の方法も教えています。また、し尿は新鮮であれば有毒なものではない、ということも伝えています。し尿は空気との反応で状態が悪くなるので、し尿は新鮮さを保たなければいけません。そして灰の適切な利用方法も教えます。こういったこと全てを(使用前に)彼らに伝えています。
私:なるほど。エコサントイレの効果を発揮するには、そういったワークショップがとても大事なのですね。ところで、彼(ジョスファトさんの横で手伝いをしている青年)もエコサンビルダーなのですか?
G:エコサントイレを建てるとき、私たちは毎回現地の人々に(エコサントイレの)知識を伝達するようにしています。彼はこの村の青年です。彼は私たちから学び、エコサンビルダーの手伝いをしています。
私:資格を持った人を増やし、エコサントイレの知識を広めようとしているのですね。
G:そうです。
私:よくわかりました。インタビューはこれで終わります。ありがとうございました!
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ちなみに今回エコサントイレを建設したのはNICCOスタッフのBelindaの個人宅でした。エコサントイレをもっと多くの家庭に知ってもらうため、Belindaの住む村の青年をエコサンビルダーのサポート役につけ、村の青年もエコサントイレに関する理解を深める姿が印象的でした。
ジョフリーが述べていた通り、エコサントイレの効果を最大限発揮するには定期的なメンテナンスが必要です。しかしケニアの農村で一般なピット式トイレ(掘った穴の中に排せつ物を溜めるトイレ)より衛生的で、かつ農業に再利用もできるエコサントイレは、現地の人たちにとっても魅力的な選択肢なのではないかと感じました。
実際、インターンをする中で出会ったスラムで働く地域保健ボランティア(*3)の女性は、「いつかここにエコサントイレを建てたい」と話していました。彼女の住むスラムでは特にこどもの野外排せつが常態化しており、それが下痢や感染症の原因にもなっているそうです。エコサントイレを導入できればこのような状況も改善できる可能性があります。
こうした現地の人たちの声からも、エコサントイレを途上国に普及させる意義を改めて感じました。引き続き、水衛生の環境改善および、豊かな農村づくりを実現すべく、NICCOのエコサントイレ普及活動をサポートしていきたいと思います。
※1:Jはジョスファトさん、Gはジョフリーを指します。
※2: Akirnyはルオ族で使われる名前で、ケニアでの私のニックネーム。朝早くに生まれた人という意味。
※3:ケニア保健省管理のもと、地域住民から選ばれる保健分野のボランティアのこと。毎週各家庭を訪問し、マラリア検査や子どもの発育チェックなど、医療資格がなくともできる簡易な医療活動を行う。
▲エコサントイレ 建築2日目
▲エコサントイレ 建設3日目
▲右がエコサンビルダーのジョスファト、真ん中はエコサントイレの建設方法を学ぶ村の青年、左がケニア事務所現地スタッフのジョフリー
〈インタビュー全文 原文〉
Me:First of all, what can I call you?
J:Josphat.
Me: Ok my name is Mio Akirny. Nice to see you. So when did you become ecosan-builder?
J: I forgot when I became, but it is about 1 year.
Me: How many days do you need to build one ecosan-toilet?
J: It takes 8-10 days. So if they take a long time, 10 days. So maximam is 10, minimum 8.
Me: Could you tell me how to build ecosan? How many processes do you have?
J: The first day, we prepare the slap and foundation. Then the second day, we build the subtraction of chambers. The third day, we through the plastering inside the chambers.
And on the forth day, we do mountain of the slap and setting it to make sure the level, flat of the level. From the fifth day, we will construct a house, roof and on the sixth day, after making roof. And seventh day, we will plaster.
Me: Which day is it now?
J: Today is the second day.
Me: How many times did you build ecosan toilet before? Did you remember?
J: Six times.
Me: And I am also very interested in how you became ecosan builder. Did you have a training?
J: Yes.
Me: Who trained you?
J: Geoffrey was one of them but there are also others.
Me: If I want to be an ecosan-builder, can I become a builder as long as you (Geoffrey) teach me?
G: No, I would say no because first of all, you need to have muscles as an artisan. Because you can’t just carry without muscles. So when you’re done with that training, I will just show you about measurement and everything. But you must have muscles. We have muscles and skills.
Me: So as long as I have muscles, I can be after training, you mean?
G: Yeah.
Me: Ok. Next question. Why did you decide to be an ecosan-builder a years ago?
J: I had a skill of building and I saw that it was a new technology which was there to stay.
Me: So you also do work for another job apart from ecsan-builder, do you?
J: This one comes just sometimes. So life goes on, I have to work for other places.
Me: I get it. So after you complete the construction, how do you use the ecosan-toilet? Could you give me a simple guide for it?
J: After the completion of the toilet, we will wait for something which is called curing. Curing is to dry it up for a little. After letting it dry, it can be ready. So after drying and cure, we assemble family members of the household. Then after assembling them, we conduct a workshop. The workshop is just about to take them to through how the ecosan works and how you can use and care for the toilet. And also because this is a new technology, we make you conduct until in case of anything and give advice like if the toilet becomes full what they should do. So we also teach them how to use it carefully so that they can transfer the knowledge to visitors who come to their house to make them use it in the proper way. And after doing the workshop, we also teach them how to recycle the product from ecosan-toilet. We tell them how to use it, how to mix it with water so that they can make fertilizer. For example we teach them you need to make five parts of yurin then you put it on the crops down the stems not on the leaves. So we teach them yurin isn’t poisonous as long as it is still fresh because yurin becomes bad by reaction of the air. So you need to keep it fresh. And also we teach them how the proper application of the ash should be. You can harvest manure after 5 to 6 months when it complete composition. So we teach them these all of things…
M: That makes sense to me. I could understand how important the workshop is to make sure of the effect of the ecosan-toilet. By the way,is that guy also a builder like him?
G: Every time we build ecosan, we also need to transfer the knowledge to somebody from that place. This guy is from here. He needs to get something from us. That person is going to assist the builder.
Me: So he is just an assistant not an official ecosan-builder.
G: Yes, because we’re working for somebody from this area and getting knowledge of the ecosan-toilet.
Me: Through you qualified builders, you can spread knowledge to others.
G: Yes, this is because the assistants just come from the locals.
Me: Ok I get you now, thank you.