2016年01月21日(木)

インターン日記@ヨルダン「NICCOスタッフインタビュー第3弾(後半)」

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現地にて働く日本人専門家(看護師)のインタビュー後半です。(前半はこちら

ヨルダン人と日本人、高めあってより良い事業に

塚田:担当されている事業について教えてください。

森尾:シリア内戦で心に傷を負った人のカウンセリングと、成人男性・女性向けのワークショップだね。女性向けには居場所づくりとしてのカフェや英語、啓発講座。男性には英語と大工教室を開いてる。

塚田:いろいろありますね。どんなことを心がけているのでしょうか。

森尾:看護師という軸はぶれないようにしてるよ。カウンセリングでは、こっちの精神科医と心理士と協力して、患者の治療方針の調整役とかをやってる。そこに、日本クオリティーというか、アドバイスをして、より良いものにできるように協力してる。あんまり上から目線になるのは良くないけどね。

塚田:日本クオリティーといいますと、例えばきっちりやるとか、計画性とかですかね。

森尾:そんな感じかな。だから、自分がどの位置にあるかってのは常に悩むよね。ヨルダン人側か、日本人側かってのは、どこまで仕事をやってもらうか、どこで折り合いをつけるかってことになるんだけど。

塚田:少しわかる気がします。ヨルダン人スタッフに、例えば『エクセルのシートを作って』と頼んだ時に、「もう少し分かりやすいのがいいんだけどなあ」とか「どうしてここで数式でなくて直接数字を入力しちゃうかなあ」とか、そういうところですかね。

森尾:そうそう。ほんとに細かいところなんだけどさ。ここまで教えるなら、自分がやったほうが早いなあって思っちゃうんだよね。

塚田:悩みどころですね。さじ加減というか。

森尾:うん。ただ、そういったところに日本人がいる意味ってのがあると思ってて、日本の広報活動の一つでもあるよね。一緒にその折り合いを考える中で、日本人の考え方を伝える、日本人がどんなであるかを知ってもらえる機会だと思ってる。

塚田:なるほど。彼らにとっては、自分たちが日本人のイメージに直結しますよね。

森尾:そうだね。外にいるからこそ、日本人であることをすごく意識する。国内にいたらこんなに意識することないじゃない?それもあって、絶対にポイ捨てはしないかな。

塚田:道路にゴミが多いのはこちらの悪い点の一つですね。

森尾:目の前であえて携帯用灰皿に吸殻を入れるんだ。そうするとこっちの人は驚くんだよね(笑)日本人が自分たちの土地まで気にしてくれてるって。

塚田:なるほど(笑)

森尾:そういう日本人のいいところと、ヨルダン人の人を大切にする心がうまく組み合わせればいいかなって。高めあうって言うとちょっとカッコつけすぎかな(笑)

塚田:(笑)そういうことがより良い事業につながっていきますね。

 

厳しくとも、少し希望の見えてきた2015年

塚田:森尾さんは、難民の方にも最も身近な日本人スタッフだと思うのですが、事業の初期のころと比べて、シリア難民の方々の変化は感じますか?

森尾:ただの印象だけれども、最初はシリアからこっちに来て、ヨルダンでの生活に慣れることに必死だったかな。でもそのあと紛争が泥沼化して、2013年、14年ころにはすごくあきらめというか、暗かったように思うなあ。シリアに帰れる気配もなければ、ヨルダンにいても将来がないって状況で。光がなかった。それが、2015年には、ヨーロッパに行ったり、アメリカやカナダに行ったりと、かすかではあるけれども希望が見えてきたんだよね。もちろん、シリアに帰れるのが一番だけれども。

塚田:実際に自分もカナダやヨーロッパに行くという難民の子どもたちに会いました。

森尾:そうそう。すごく身近にちらほら聞くようになったじゃん。だから、少し明るく見えるんだよね。

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援助を通じて、日本人へのリスペクトを次につないでいく。

塚田:日本国内にだってたくさん問題はあるのに、なぜこんなに遠くのシリア人に日本人が関わる必要があるのかと聞かれたら、どう答えますか?

森尾:う~ん。「遠くの国ばっかり見てないで、足元の自国をみなよ」ってのは良く言われるものだけれど、援助ってそういうものなんじゃないかなあ。つまり、すぐに国益というかそういうのにつながるものではないけれども、どこかでつながってるわけで。この事業も日本の寄付者の方や外務省からJPF(ジャパン・プラットフォーム)を通してお金を頂いているわけだからね。だから、できる人がやればいいわけで。みんなが皆こんなところまできてやることはない(笑)

塚田:どんなふうにつながっていくんでしょうか。

森尾:やっぱり、「日本人」というものが何かを理解してもらうことじゃないかな。こっちで自分が日本人だって言うと、反応が全然違うじゃない。

塚田:タクシーで急にディスカウントが発生したりしますね(笑)

森尾:そういう日本人へのリスペクトを続くようにしたいなとは思うね。製品とか、これまでのイメージのおかげだけれど、日本人であるっている意識をもって、取り組んでいくことで、そういうものにつながっていくんだろうね。

 

『国際協力』を大げさにとらえすぎないで

塚田:国際協力に興味のある方々へのメッセージをお願いします。

森尾:あんまり「国際協力」って大げさにとらえすぎないでほしいな。自分ができることをやればいいんだから。俺だって海外に行って働いてみたかっただけだし、最初から構え過ぎずに、まず踏み込んでみて、将来的に国際協力につながればいいよね。

塚田:自分でハードルを高くしすぎず、まず海外に行くことからでも始めてほしいですね。ありがとうございました。

 

インタビューを振り返って

森尾さんは、お茶目な方で、またとても気配り上手なかたです。日本人スタッフの方々をよく家に招いて日本食をふるまってくださいます。おかげ様で私自身も、3か月の間、日本食にあまり飢えることもなく、日本よりもよい食生活を送ることができました。

インタビューから感じるのは、森尾さんの現地の人々への尊敬の念と、そのなかで日本人としていかに仕事をするかという葛藤です。特にヨルダン人と日本人が「お互いに高めあう」という言葉からは、森尾さんの『協力』のあり方が伝わってきました。3か月という短い間でしたが、彼の取り組みを間近で見ることができ、嬉しく思います。

ご一読いただきありがとうございました。

インターン 塚田寛人