2017年03月10日(金)

まもなく迎える2017年3月11日

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まもなく迎える2017年3月11日、東日本大震災の発生から6年が経とうとしています。

あの日、一日にして、多くの尊い命が地震と津波により失われました。

 

震災が起こったとき、皆さんは何をされていましたか?

当然のことですが、一人ひとりに違った記憶があると思います。

私の場合は、地震発生から数週間が一つなぎの記憶で鮮明に思い出されます。毎年3月11日には、年を重ねてもその記憶を忘れないように、しっかりと思い出すようにしています。

 

2011年3月11日、この日はNICCOの一番大きなチャリティ・イベントの最終日で、私は会場である京都の事務所応接室にいました。1年かけて準備をしてきたイベントの最終日でしたので、かなりの疲れもあり、京都での緩やかな揺れは、ただ自分の目が回ってきたのだと思いました。しかし天井からぶら下がるペンダント型の照明が揺れているのを見て、地震だと気づきました。その後すぐ、事務所の食堂にあるテレビの前にボランティアの方々が集まっておられ東北地方で大きな地震があったことを教えてくれました。

 

イベントの最中でしたが、その日は地震発生以降、会場には誰も来ませんでした。関西に住む人たちはテレビの前で東北の方々が助かることを、ただただ祈るばかりだったと思います。

 

1時間も経たないうちに、NICCOは被災地で緊急支援活動を実施することを決めました。私はその初動メンバーとして被災地入りすることになりました。急いで、途中だったイベントの引継ぎを済ませ、緊急支援の準備を始めました。夕方に差し掛かっていましたが、その時には、疲れを感じないようになっていました。何かをしなくてはいけないという一心で。

 

翌日1日かけて準備をし、さらに翌日の朝、NICCOの同僚3名で宮城県名取市に向かいました。津波の海水は引いていましたが、瓦礫や車が町を覆っていました。移動しながら記録のためにビデオカメラで被害状況を撮影していましたが、ブルーシートにくるまれた人の遺体を見つけたとき、心臓が止まりそうなくらい驚き、カメラをたたみました。東北に降りかかった災害の何たるかを実感した気がします。多くの人が亡くなり、家族や友人を失い家や職場、船、家財を失い、悲しみに暮れる人たち。生死も分からず、離れ離れになっていた家族が避難所で再会し、泣きながら抱きしめ合う姿。そんな現実が、触れられるほど目の前にありました。

▲2011年3月14日 宮城県名取市。津波で流された船が住宅に突き刺さっている。

▲岩手県陸前高田市。沿岸部は壊滅的な被害を受けた。

私の個人的な記憶を述べてしまい恐縮ですが、被災された東北の皆様の心の中にどのような記憶が刻まれておられるか、支援として寄り添ってなお、想像が及ばない痛烈なものだったと感じております。

 

その後、NICCOは初動の支援として避難所の巡回診療や物資配布を開始し、農地の整備のボランティア派遣、心のケアや漁業復興など、その時期、その地域に合わせてお手伝いをさせていただきました(過去6年間の活動はこちら)。そして今も岩手県で子どもたちへの食育教室の実施や宮城県での漁業復興支援を引き続きお手伝いさせていただいています。(現在の活動はこちら

 

2016年度は、岩手県で子どもたちや親御さんを対象に食育教室を実施しました。この教室の目的は震災からの復興と地域の活性化を目指し、地域の産業の魅力を若い世代に伝え、地域産業の持続性につなげることです。また、東北の豊かな自然から生まれてくる新鮮な食材を食べることが、子どもたちの健全な成長の源となります。地域で取れる食べ物を食べ、地域の将来を担っていく人材に成長してもらうことも、長期的な目標となります。

 

東北の子ども達は、様々なことを吸収する大切な時期を、大きな被害を受けた町で暮らしています。今回の食育教室は被災してもなお、復興を誓い地域での産業に従事する大人たちの誇りや自然の豊かさに接しながら、子ども達が地域の担い手として成長していくきっかけとなりました。

 

震災から6年という月日が流れ、東北の町の復興は進みました。町のところどころに震災後新たに暮らしの拠点となるような公共施設や民間の施設が建設され、復興の象徴のように地域の人たちに利用されています。もちろん、まだまだ課題は残っています。その課題は、またこの1年で解決していくことになるでしょう。そのなかで、2018年を迎えたときには新たな課題が見えてきていると思います。毎年3月11日は特別な思いで迎えますが、今年の3月11日も復興への通過点の一日です。これまでの6年間、復興への道のりを一日一日、力強く歩いてこられた東北の皆様に敬意をもってこれからもともに歩んで参りたいと思います。

 

公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)

東北事業担当 大豊 盛重